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社会で活躍する同窓生をCLOSE UP 輝くKG同窓生のインタビューとメッセージを掲載します。

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  020 松本克巳さん 日本フィルハーモニー交響楽団ヴァイオリニスト
 


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実際に「聞く」「見る」「感じる」直接的な体験を増やしてほしい。
松本克巳さん
(まつもとかつみ)
【PROFILE】1953年山口県宇部市生まれ。関西学院大学理学部遺伝子学を学び、1977年卒業。現在、日本フィルハーモニー交響楽団でヴァイオリニストとして活躍中。入団以来、意欲的に様々な活動に参加している。現在、『ヴァイオリンとバラのロマンス』、『ジャコンヌ・花舞』のアルバムが発売中。また、ソロとしてのヴァイオリンリサイタルが、8/28(木)19:00潤` 東京文化会館小ホールで行われる。関西学院同窓会東京支部でもチケット発売中。
日本フィルハーモニー交響楽団でヴァイオリニストとして活躍する松本さん。取材当日には、楽屋で素晴らしいヴァイオリンの音色を聞かせてくれるほど、気さくで大らかで包み込まれるような魅力をたたえた紳士。そんな松本さんは、実は最初から音楽家への道を選んだわけではなかったそう。高校の生物の先生から音楽家への華麗なる転身をはじめとした、ヴァイオリン人生を語っていただきました。
ヴァイオリン人生
幕を開けたきっかけ。


「最初からヴァイオリニストになろうとは全然思ってなかったんですよ」 5歳のときから始めたというヴァイオリン。いったい、その出会いとは?
「隣の家に住んでいた4歳上のお兄さんが習っているのを見て、僕も習ってみたいな、と思ったのがきっかけ。でも子供の頃って、あんまり練習した記憶がないんですけどね」
中学入学と同時に、親の転勤で大阪にお引っ越し。その新しい地で、ある先生と出会ってから、松本さんのヴァイオリンへの意識がガラリと変わる。
「たまたま家の近所でヴァイオリンを教えていた先生は、その道では有名だったらしく、紹介状なしでは習えなかったんですよ。でも、母が必死に頼み込んでくれたおかげで、『一度、息子さんをつれてきてください』と。母の思いに応えるべく、一生懸命練習して、先生の前で弾いたところ、4小節弾いたところで『もういい』と言われてしまいまして(笑)。『今までやってきたことをゼロにして、もう一度、最初からやり直しましょう』という条件のもと、その教室に通えることになったんです」
 これを機に、松本さんのヴァイオリン魂に火がつき、一生懸命、練習に励む日々がはじまった。

★ ★ ★

屋上でヴァイオリンを
弾いていた理学部時代。


 中・高とテニス部に所属しながらも、家ではヴァイオリンを続け、大学は理学部に入学。
「毎日、楽器が弾けるから、最初はオーケストラ部に入ろうと思ってたんですよ。それをヴァイオリンの先生に相談したところ、『入りたければ入りなさい。だけど、今以上にうまくはならない! もっとうまくなりたいなら、うちの教室で鍛えた方がいい』と言われたんです。
 そのアドバイスを聞いて、結局オーケストラ部には入らずにクラシック音楽同好会に入ったんです。週に1潤`2回、クラシックマニアが集まって、指揮者によって聞き比べとか、演奏会に一緒に行ったりしてましたね」
その同好会で出会ったなかに、後に奥さんとなる人もいたそう。
 そんな充実した学生生活も3年目に突入した頃、また新たな出会いが訪れる。
「ゼミの先生がフルートをやっていましてね。面接のときに、『授業の合間に練習してもいいですか?』と聞いたところ、『たまに、僕と合奏してくれるならね』と快諾してくれて。しかもその先生が屋上を管理していたので、朝や夕方に解放してくれ、そこで練習できることになったんです。嬉しくって、毎日、屋上で弾いてましたよ。屋上って見えないから、下を歩く人たちは、どこからともなしにヴァイオリンの音色が聞こえてくる。それって一種のミステリーですよね(笑)」
 4回生になったとき、「生物の先生になりたい」という思いがあった松本さんは、就職活動はせず、教師の採用試験のみ受けるという選択肢を選んだ。
「実は採用試験には受からなかったんです。それが幸いでしたね」
とはいえ、先生の夢をかなえるべく、卒業後は非常勤講師として大阪の渋谷高校で教鞭をとりはじめた。
「ちょうどそのとき、ゼミの先生に研究生にならないか?と誘われたんです。学費は必要なく、研究室で自由に実験を続ける制度なんですけどね。
染色体の構造について研究しながら、生物の先生をしていました。2年目は常勤になり、順風満帆に思えたものの、心の奥底では、ヴァイオリンの道も捨てきれなくって・・・。ついにヴァイオリンの恩師に相談してみたんです。すると、かえってきた言葉が、『その気があるなら、なんでも協力する! でもとにかく留学しろ』と」
 とはいえ、その当時すでに25歳。
「留学はまったく考えられなくって。できるなら日本にいたい、と率直に恩師に話て、破門にしてもらったんですよ(笑)」
 そして、転機が訪れた。

★ ★ ★

教師をやめて、上京。
かねてからの思いが叶えられる。


教師をやめて上京し、ヴァイオリンで一旗あげようと決意。
「ヴァイオリンを始めるきっかけになった4歳上の幼なじみのお兄さんが日本フィルハーモニー交響楽団(以下、日本フィル)にいたんですよ。そこで、一生懸命練習して、東京に出てきてから、突然お兄さんのもとに訪れて相談したんです」
そのガッツを認められて、全面的にバックアップ。おかげで1年後、見事、入団を果たす。
「とにかく嬉しくって、演奏はもちろん、演奏以外でも何かできることはしていきたいという思いがいっぱいでしたね」
 その信念のもと、日本フィルの活動を写真で記録したり、阪神大震災や中越地震のときには救援コンサートを開催するなど、幅広く活動を行っている。特に、KG生にも多大な影響を与えた阪神大震災のときには
「音楽の力で少しでも疲弊した心を癒してもらえれば、という思いで、
有志たちと『樹々の歌合奏団』を結成して、述べ50回くらい公演しましたね。そのときの地域の人との交流はとても心に残っています」

実際に「聞く」「見る」「感じる」
直接的な体験を増やしてほしい。

松本さんが今の時代だからこそ、大切にしていること。それは、実際に体験する、ということ。
「今はネットなどで、情報は簡単に手に入りますよね。実際にいろんなことを体験することは、どんなことにも必要。ネットや人からの話など、何かを媒介にするのではなく、直接、自分で見たり、聞いたり、触ったりする。その場で人と空間を共有すると、何か感じるものが必ずあるはず! オーケストラって不思議なものでね。同じ曲でも指揮者次第で音色が変わるんですよ。構えずに、月に1回でも、非日常的な空間に身をおいて響きわたる生の音をぜひ経験してみてほしいですね」
現在は、8月に行われるリサイタルに向けて、日夜練習に励む日々。ヴァイオリンから紡ぎだされる繊細な音色の奥深さを体感してみては?

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