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健康生き生き

vol.22

暑い、熱い

大井 玄

 暑いですねー、まったく。
 昔は元気だったと思います。なにしろ真夏に生まれ、海が大好きでした。
    夏は来ぬ 相模の海の南風に
       わが瞳燃ゆ わがこころ燃ゆ
などと吉井勇の歌を口ずさんだ頃もありました。ところが今、夏の酷暑は心配のたねです。というのは、熱中症の危険性が現実味をおびてきたからに他なりません。
 六月末、東京で観測史上初の36.2度が記録されたことは、私たちの記憶に新しいはずです。一昨年夏、フランスでは一万人にものぼる熱中症の死者がでて、当時の厚生大臣の首がとびました。地中海北沿いのイベリア半島、イタリア、南フランス、ギリシャなどの地域では、現在砂漠化が進行中だといわれます。日本はモンスーン地帯に位置し湿度が高いですから、状況はもっと深刻かもしれません。東京がバンコクよりも暑い夏日となっても不思議ではないでしょう。

 熱中症は、体内に生じた熱がうまく体外に放出されないために起こります。実際、体内温度が44度などという症例も報告されています。
 若い人では、激しいスポーツをしている時、散発的に起こるのですが、高齢者(私もその一人であります)では、一時に多くの人たちが、つまり「集団的に」発症します。
 その一つの理由は、高齢者は心臓病、糖尿病など慢性病にかかっていることが多く、薬を服用(とくに利尿剤)していますが、これらは熱中症になりやすい条件をつくっていると言えます。さらに、高齢になると寒さに弱くなるのに、暑さに対して鈍感になることも一因であるように思います。私が長野県佐久市で寝たきり老人のお宅を訪れていた頃、真夏だというのに厚い布団をかけ、もも引きを穿き、肌着を何枚も着た人たちを診たものでした。
 高齢者の熱中症は、症状があまりないことも特徴ですが、ちょっと頭痛がするな、と思っているとスーッと意識が混濁してくるような場合があります。家人に気づかれないことさえありますのでご注意を!
 したがって、熱中症は、まず予防が大切と申せます。暑さと高い湿度を避けること、水分を充分にとること、涼しく快適な場所に身を置くこと。
 地球温暖化は確実に進行していきます。私たちも確実に年を重ねます。そこで肝要な老年の知恵は、「用心」の一語につきるでしょう。



 

 

 





 
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