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健康生き生き

vol.8
「うつ」という状態
大井 玄

 「五月病」といわれるように、一部の新入生や新入社員にうつ状態を示す者が見られる季節になってきました。うつ状態はごく普通に経験されるもので、わたしのクリニックにも何人か「うつ」を訴えて相談にくる人がいます。
 うつ病には躁とうつが交代するような型や、主として身体の症状として現れる型などいくつかの種類がありますが、今回は典型的な「うつ」の症状についてお話します。
 うつ状態が手軽に経験されるのは二日酔いの時です。目覚めるとまずズキンズキンと頭痛がする。また飲み過ぎたのか、しかしおっくうで何もしたくない。昨夜の自分のはしたない言動が思い出されて「なんて俺ってバカなんだろう。バカは死ななきゃ治らない」と自責の念が生ずる。これは自分のくだらなさ加減についての「悲哀感」といってよい。学校に行くのも、仕事をするのもかったるい。何も食べたくない。
 この場合はアルコールの飲みすぎが原因だと判っているから対処できます。アスピリンと大量の水を飲んでじっとしていればよい。それどころか、夕方近くなると、今朝の苦しみは不思議に忘れてしまって紅灯のちまたが懐かしくなってくる。しかし二日酔いの朝の状態が毎日続いたらどうでしょうか。食欲もなく、夜も寝られず、体重は減り、だんだん絶望的な気分になっていく。「くたびれてしまった。人生をこれ以上生きたくない」といった『希死念慮』も現れる可能性があります。
 わたしは若い頃はみさかいなく大酒を飲んだため、またある時期はうつの状態が続いていたこともあり、うつ病の患者さんが訴える症状は、「体験的に」理解できます。つまり自分がその症状を親しく経験しているように「共感」できるのです。
 そして、人生は根本においては苦しい旅である、と喝破した昔の人のことばが正しいと思わざるを得ません。
 さいわいなことに、ここ数十年の間に薬物療法が有効になり、大部分のうつは対応できるようになりました。しかし薬を中止するとうつ病が再発することがよくあります。やはりうつ病には、薬と同時に心のケアともいうべき心理療法を必要とする所以です。次回からはそのような点にも触れてお話しましょう。



 

 

 





 
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