健康生き生き
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vol.2
コトバと「病気」
大井 玄
今回は、鍼灸やホメオパシー、アロマテラピーなど補完・代替医療に訪れる方々の声を聞いてみましょう。
この方々は、いずれも過去には現代医学を提供する大学病院などの機関をいくつも訪れていました。そこでは頭痛、腰痛などの身体の痛み、めまい、疲れやすさなど様々な訴えに対し検査、診断、投薬をしてくれたのです。しかし、血液検査やレントゲン検査をしても悪い処は見つからないのでした。
医師は、原因をつきとめたならば、鬼の首を取ったようにこころ勇んで治療したり、いろいろ説明したりしてくれました。しかし原因不明の場合、つまり「……病」というコトバで指示できない場合は、急速に熱意を失うようです。
症状に対して、それを鎮める意味で薬を処方しますが、それで症状が軽快しないこともよくあることです。そう医師に伝えると、目に見えて不機嫌になったり、素っ気無くなったりし、最後には「それは気のせいですな」などと云われるのでした。初期には時間をかけて診てくれましたが、そのうち挨拶程度になりました。
それに比べると、鍼灸でも、アロマテラピーでもその親切さには減衰がありません。毎回、身体以外の悩みを聴いてくれ、それは単に「痛み」という症状軽快以上の、肩の荷が心なしか軽くなるような気にもなるのでした。
現代医学は、証拠(evidence)に基づいてコトバで定義できる「病気」に対し、科学の粋を集めた手段を用い「病気」を治療してくれます。しかしそれは、人間関係のギスギスしたこの世で生きて行くとき生ずる、へばりついて離れない肩の荷のような、実存の重さを軽くすることには無関心のように見えました。病名のつかない病気というのも、意外に多いってことをご存知だろうか。
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