vol.23
ガンは避けられる

生活習慣を改めることで予防できるガン

　九月はガン征圧月間である。ガンの早期発見や、ガンの予防に関して全国的に公私の行事が催されることが多い。

　日本人は、文化国家の中では胃がんの発病率ならびに死亡率が最も高いという事実が長年あり、このために胃がんの早期診断上の優れた胃のレントゲン撮影法（二重造影法）と胃の内視鏡検査が発達している。内視鏡でのぞいて怪しいと思われる胃の粘膜の病変があれば、内視鏡の先にある組織をつまみとる装置で怪しい組織をつまみとり、それを染色して顕微鏡下にガン細胞をしらべる。これを生検（バイオプシー）という。

　からだの外から見たり、内視鏡で胃や大腸や膀胱壁、子宮膣部をのぞき、疑わしければそこの組織をとって調べることは、ガンの一番早期の診断法である。

　このような内視鏡やレントゲン撮影、生検などで調べられるところのガンは早く発見できる。身体の深部をみるには、放射性物質を静注してそれがガン病巣にとり込まれれば、これはシンチグラムという放射能に感じる装置で、病巣の有無がわかる。

　このような方法でガンが早期に発見されると、早期手術や早期放射線療法がはじめられ、ガンは治療することが多い。

　しかし、内視鏡をのんだり挿入してり、バリュウムを飲んで造影撮影をしたりすることができない臓器ではガンの発見が遅れる。ガンが広がるか、ガンから特殊な物質が出て血液にはいれば、これを種種のテストで捕らえる事ができる。

　早期にはなかなか血液反応ではわからず、外にも内にも顔を出さないと言うガンは、手術や放射線照射で早期に治すことはできない。

　前立腺ガンなどは、アメリカの老人の過半数にあるといわれているが、ごく早期に発見しようと思えば、前立腺を無作為に生検して、運よく病巣の組織が取れない限り、早期には発見されない。

　その時代にできる最も進んだ検査法を用いても、始りを発見できないようなガンは、病気が進むのを待つほか手がない。ガンのごく初期にガンの化学療法や手術をすれば大抵のガンは助けられるのである。だが、これができないものについては、定期的に人間ドックの受診をしても、早期にガンを発見することは難しい。このようなことを頭において、どこまで人間ドックに期待できるかを皆勉強しなければならない。

　最近、日本人の胃がんは早期発見されるものが増えたが、日本人の胃がん発生率も下がっている。これは日本人の食事内容が欧米化されたことや、塩分のとり方がへったり、あまり熱いものをとらなくなったためで、これは習慣の変容に関連して起こったことかもしれない。

　一方、肺ガンや前立腺ガン、大腸ガンは欧米人に多いが、これらが増えるのも、欧米人の食生活に日本人が近づいたためかもしれない。

　しかし、肺ガンの中には、確かに喫煙と関連して発生するという肺ガン（扁平上皮ガンと小細胞ガン）がある。もうひとつの種類の肺ガン（腺ガン）は、それが何故起こるかよくわからない。しかし少なくともたばこに関係して発生するガンがあるのに、たばこを吸い続けるのは愚かである。

　予防できるガンには、めいめいがこれは自分のことだと考えて、予防手段として禁煙されることをすすめる。