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健康生き生き

vol.21
エイズ

患者と共存しながら蔓延を防ぐ教育を

 夏が始まると日本三大祭りの一つといわれる祇園祭が京都で行われる。一方、七月十四日に日本で祝われるパリ祭は、一七八九年のフランス革命記念日である。
 京都の祇園祭も外国からの観光客にはかなり知れわたっている。何台かの鉾が街を縫って運ばれる光景は壮観である。この祭りはもともと貞観十一年(869)に悪疫が全国的に流行した、その消滅を記念して営まれた御霊会に始まるという。
 私は戦前、京都で十二年、高校・大学の学生生活を過した。当時高い鉾からはちまきが群集に投げられ、拾った人はこれを自分の家の玄関に張りつけて厄払いをした。
 日中戦争のころ、私は京都市の伝染病院でしばらく働いたが、梅雨があけるころから、大人の赤痢患者とともに、子供の疫痢患者が毎日続々と入院する。疫痢は赤痢に似た下痢と中毒症状を伴う伝染病であるが、かかった子供の四割近くが死亡するという命とりの病気であった。
 これらの患者に対して、当時の伊沢院長は、日本で最初に静脈内点滴注射を発案された。これで子供を助けることに成功した例もあった。
夏から秋の終わりまでこの伝染病院に臨時勤務するうちに、ほとんどの種類の伝染病を扱った。知らないのはコレラとペストくらい。短期間に蔓延し、多くの人の命とりとなる病気のことを疫病と呼んできたが、この地球上の最大の疫病は黒死病といわれたペストであった。
 欧州では十四世紀にペストの大流行があった。数年前、ウィーンを訪れたとき、大寺院の地階にペストで倒れて積み重なって白骨化した残がいを見て戦慄を感じた。治療法がなく感染した人々はみな死んでいった。避けるにはペストの流行した街を逃れて田舎に行くほかすべはなかった。
 近代医学はすべての疫病を癒すと期待された今世紀の末近くに、ニューフェースの悪疫としてエイズが現れ、アフリカから欧米に、そして日本にも上陸した。これを世紀末的疫病として警告する人も少なくない。私たちは、自分の健康を考える場合、家族や社会、国家、さらに地球という大きな立場からの健康づくりをしないと、エイズのようにまだ治療法のないビールスによる疫病には太刀打ちできない。ペストやコレラは感染するとすぐ発病するが、エイズは感染後八年くらいしないと症状が出ない。その間、性的接触やその他のことで感染が広がる。受診して、エイズのビールスのキャリアだということがわかれば当人の自覚で広がりを防げるが、受診しない人が大部分だとなると自他ともにわからない状態でエイズが蔓延する。
 いま日本にはエイズの発病者が六八五人、すでに感染をうけ将来発病するものが二九〇人を超える(1993年12月現在、厚生省エイズサーベイランス委員会発表)(注1)。WHOの報告によると全世界では感染者は八十万人(注2)を超え、アジア地域の増加率が高く、HIV感染の蔓延は大きな問題であるという。
いままでの疫病は、患者を強制隔離し、主な治療法は化学療法であった。しかし、こんにちのエイズ対策は、不幸にしてかかった人と共存する中で蔓延を防ぐことを目指さなければならない。これは患者と周囲の人の教育で蔓延が防げる。そして、そのためには、国民はしっかりした教育を受け、実践することが必要である。
 社会の中に病気が入り込んで一緒に生活する中で、感染を予防するという長期戦が展開されなければならない。これは二十一世紀での健康保持上の最大の課題である。
日本人の経済的豊かさが、食生活を欧米化させる。この危険因子に対して警告を放ち、食生活を改め、たばこをやめ、車の生活から歩く生活、そして運動により精神の緊張をほぐすような生活スタイルに早く変容すべきだと思う。8月10日は、このことを国民に浸透させる「健康ハートの日」として、国民1人ひとりの心に銘記される日、そしてこれが祝日となれば万歳である。



※注記として、当編集委員会の調査による最近の数字を下記。
注1:2002年3月31日現在エイズ発症者2311人 HIV感染者4649人
   (出典2002年国民衛生の動向:(財)厚生統計協会
注2:2001年11月現在278万人(WHO)







 
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