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健康生き生き

vol.14
病気の一次予防

衣食住の悪習慣を改める生活のデザイン

 昭和六十三年に国際健康評価学会に出席した。この学会の名称をもっとわかりやすくいえば、日本でいう「人間ドック学会」である。

 タイミングのよい健診がなされれば、早期の胃ガンとか、子宮ガン、糖尿病などが発見される。ガンの場合は早く外科手術を受ければいのちが助かることが多い。血液をとってその化学的成分を調べてもらうと、尿酸値が高くなっていることがある。当人は無自覚だが、モツ類を食べすぎたり、酒をのみすぎたりしていると、ある日突然、猛烈な足の痛みの発作、すなわち痛風発作をおこす。この病気も平素、定期的に尿酸値のチェックを受けていれば、発作予防薬があるので、発病を未然にとめられる。人間ドックは国立東京第一病院(現国立国際医療センター)と私の勤める聖路加国際病院とが、昭和二十九年に日本で最初に開設した。最初は一週間入院だったが、検査方法が進歩し、自動分析器を使って何種類もの検査が短時間になされるので、いまでは一泊二日、または外来に一日くれば三時間くらいのうちに検査ができるようになった。

 このような組織的な検査は米国では日本より少し早く始められ、当初から外来でなされた。カイザー財団がこれを世界で最初に自動化し、成功をおさめた。

 この学会では、欧米諸国と日本との関係者一〇〇人余りで、「予防医学の前線―科学と技術」というテーマに関する研究発表や討議を行った。各国により国民の食べるものをはじめとして生活スタイルが非常に違い、それが原因して各国民のかかる成人病に違いがある。欧米では心臓病や肺ガンが圧倒的に多く、日本人は脳卒中や胃ガンが多い。

 ハワイに移住した日本人の死因を三十年も追ってみると、日本人でも生活がアメリカ化すると、ハワイにいるアメリカ人と同じように心臓病が増して、脳卒中は減っていることがわかる。

 日本では、この学会を総合健診医学会と呼んでいて、なるべく多くの人が一年に一回定期的に人間ドック検査をうけることを勧めている。この国際学会は、各国では検査技術や健康評価の問題点を論じるとともに、チェックをして病気を早く発見するだけでなく(早期発見のことを二次予防という)、そのような病気、成人病にならないようにするには、国民をどう教育すればよいか、国民の環境をどうよくすればよいかということが討議の中心におかれた。これまさしく"生活のデザイン"である。衣食住の生活の習慣に悪いものがあればこれを改めて、よい習慣に変更させる。これを一次予防といっている。これが成人病の予防にいちばん大切である。

 このときの学会には、日本からボランティアが一〇人も参加した。医療職以外の一般の人々が、それぞれの自国の人々に習慣の変容が実行されるように働きかけること、それが医師の忠告よりずっと効果的である。今後、一般人がこの予防運動に参与することが期待される。



聖路加国際病院理事長(関西学院旧制中学部卒)
日野原重明著「いのちの器」より



 

 

 





 
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