関西学院大学同窓の企業経営者の方々を講師に迎え開催している、第二期シニアマネジメント塾の様子を特別にご紹介します。
9月8日開催の講師は、1978年関西学院大学商学部卒、大同生命保険株式会社の工藤稔会長です。
来年度以降、参加をご検討されている方は、是非参考にして下さい。
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Let’s enjoy! 仕事は楽しくないとね。
工藤 稔氏 大同生命保険株式会社代表取締役会長
9月8日のシニアマネジメント塾は、大同生命保険株式会社会長、工藤 稔氏を講師に招いて開かれた。
創業1902年の同社だが、時代とともに変革が求められる業界のなかで、どのような独自性を打ち出してきたのか、リーダーとして何を大切にしてきたかなどを時代背景や具体的な経験を交えて話していただいた。その後、受講生との間で、活発な討論が行われた。
中小企業のサポートで差別化、ユニークな戦略
「私が入社した43年前は、保険会社はどこも同じような仕事をしていました。内容が同じなら、大規模な会社にはかないません」と工藤氏は話す。大同生命は大阪では老舗の会社だが、資金力で考えればより大手の企業がある。資金力で追いつけないとすれば、何で勝負すればいいのか。
「生保は商品で特許を取ることができない。A社が生み出した商品は時間が経てばB社、C社も作る。だから商品以外のところで差別化をつけないと生き残りが難しい、そういう業界なんです」
そこで大同生命が今から50年前に社内議論の末、選択したのが、顧客を中小企業に絞り込むことだった。保険は個人が掛けるもの、という当時の常識を見直し、日本企業の99%を占める中小企業を支えていくという独自のビジネスモデルを立ち上げた。経営者は脆弱な資金で経営を続けている。万が一のときに何からの保証が必要であり、単に企業のためだけでなく、日本社会の基盤を支えることになると判断した。
そこで中小企業の経営者の在任中の死亡などによる企業のリスクをカバーする保険を提供、損害保険会社との提携や労務管理支援、災害時の社員の安否確認などきめ細かいサポートシステムを整え、中小企業経営者を守る保険に特化。そのユニークで新しい価値提供などが評価され、2004年度にはイノベーションを起こし、その結果業界で高い収益性を達成している企業に与えられる<第04回ポーター賞>を受賞している。
工藤氏はこう問いかける。
「規模の大きな会社だけが、必ずしもいい会社だと言えるだろうか。私は業界順位よりむしろ、働いている人たちとお客様との関係性がよいことのほうが大事だと思います」
受講生の質問から
工藤氏の話に対して、参加していた受講生からは活発に質問や意見を述べる手が挙がった。
「企業はいま守りに入っているところが多いと思いますが」
「中小企業に参入制限はありますか?」
「そんなリスキーなことができたのはなぜですか?」
「ベンチャー企業への投資は考えていますか?」
「関西、とくに商いの街大阪を再生するには?」
「シニア世代の働き方に対しては?」
「次のアプローチは何を?」
「仕事で大切にしていることは?」との問いには、
「Let‘s enjoy!楽しくないとね。そのためには失敗を許容できる体質も大事だと思います」
と答えた。
工藤氏は一人ひとりに丁寧に答え、逆に受講生から意見を聞くなど、ともに学び高め合うシニアマネジメント塾としての気概が感じられた。
終了後、受講生の一人、山根一朗さん(1986年社会学部卒)は
「早くからPE(プライベート・エクイティ)投資に取り組み、高い運用実績と知見を積み重ねているところに注目していました。工藤会長から直接お話をうかがって、規模を追わず、役職員が『新しい・面白い』ことに果敢に取り組むことを良しとする企業風土が、今日の大同生命を築いたのだと感じました」
と感想を述べた。
★工藤 稔氏プロフィール
1978年関西学院大学商学部卒。大同生命保険株式会社に入社。2005年取締役、2014年代表取締役副社長、2015年4月代表取締役社長に就任、6月T&Dホールディングス取締役を兼任。2021年4月より大同生命保険株式会社代表取締役会長を務める。
レポート・写真 室田元美(1982年社会学部卒)
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