5月15日KG46年会ZOOM交流会
5月15((日)午後4時から、参加者18名にて講師にコモンズ投信の伊井社長をお招きして質疑応答を含めて2時間にわたって46年会のオンライン交流会を開催しました。
初めに同窓で今回講師の紹介をお願いした川崎さんから主宰するワイン愛好会を通じて知己を得たとの経緯をご説明いただき、続いて伊井社長からテーマ:「長期投資家から見た経済と株式市場」と題して講演いただきました。
概要を次の通り記します。
- プロフィール
① 愛知県名古屋市生まれ。瑞陵高校から関西学院大学法学部政治学科 岡ゼミ所属
1984年山一證券入社。姫路で5年営業、その後本社営業企画部で10年間マーケティング、営業戦略部門を担当、その後、機関投資家向け債券営業。傍で、会長、社長のスピーチライターをする。
② 1997年 メリルリンチ日本証券の立ち上げに参画し、同社および三菱UFJメリルリンチPB証券にて法人営業およびプライベートバンキング業務を約10年間経験。
③ 2008年9月渋澤栄一の5代目渋澤健氏らとコモンズ投信を創業し代表取締役社長に就任、現在に至る。
④ 2012年6月よりCIO(最高運用責任者)を兼務。
⑤ 年間100回以上の講演を実施 著書を多く出版 BSテレ東に月一レギュラー出演 日経などメディアにもコメント数多く記載
⑥ 主な著書に、普通の人が日本株です年7%のリターンを得るただ一つの方法、市場ではなく企業を買う株式投資、企業・投資家・証券アナリスト価値向上のための対話、97.7%の人が儲けている投資の成功法則、こどもお金のルールなど。
- コモンズ投信について
① 2008年11月投資運用業・第2種金融商品取引業免許取得 投信販売を開始
② 運用商品:日本株アクティブファンド コモンズ30ファンド、ザ2020ビジョン
③ 様々な賞を取得 2018年に金融庁が公表した共通KPIで97.7%の顧客が運用益で業界トップの成績で表彰
④ 運用資産:700億円
⑤ 日本で先駆け長期集中投資を開始、近年ESG投資として注目される。
- コモンズ投信のロゴの想いとあり方
① 世代をつなぐ30年目線で子供の時代をより良い持続可能な社会を!
② 一人ひとりの未来を信じる力を合わせて次の時代を共に拓く〜投資は未来を信じる力〜をミッションにしている
- 麻生氏:1万円の利息を得るのに12.5億円の預金が要る。 証券業界へ激励
- 日欧米の金融資産の比較
① 個人金融資産=勤労所得+財産所得:1995年からの20年で、米3.32、英2.46、日1.54
② 日本:金融資産2000兆円、うち預貯金1070兆、うち投信70兆(保有人口7%)、多くは60才以上が保有 日銀120兆円
米国:1京2000兆円、投信2500兆円(保有人口50%)年代に拘らず保有 非課税枠90%活用、積立利用率70%
- 資産形成
① 岸田首相の発言の様に日本でも資産形成で個人の金融資産を長期で倍増可能
② 貯蓄から貯めて殖やす資産形成へ まず、日常生活のための流動性資産を貯める、長期的な資産形成は貯めて殖やす、最後に運用目的資金は余裕資産で投資
③ 積立投資は、売買ではないので良い習慣を身につける仕組み
- コモンズ投信の実績
① 運用損益がプラスの顧客比率推移 積立投資を実践されている方が約80%であることなどから常に業界トップクラス。2022年3月末も94%の方が利益が出ている状況
② 5年以上継続保有をされているお客様は、ほぼ常に全員がプラスのリターン。
③ 積立NISAでコモンズ30ファンドは日本株ファンドで1位の成績
- 世界の成長を取り込む投資術:コモンズ30ファンド
① 平成30年間の日経株価;30,209円で始まり22,258円で終了 7,950円、26%の下落。
② 時価総額を5倍にした企業;東証上場1287社中5%の64社 61%の781社は価値毀損
③ コモンズ30ファンド;5倍以上は8社
④ コモンズ30の5軸:収益力、競争力、経営力、対話力の4つの力と企業文化が30年目線の長期投資のレシピ
⑤ コモンズ30の投資先:7割の20社が海外売上高比率50%以上、うち10社は70%超 NYダウのパフォーマンスがいいのは、強いグローバル企業が多数のため
⑥ コモンズ30のパフォーマンス:設定以来14年です317%余、年率12.7%UP TOPIXは配当込で218%余
⑦ 直近2021年の投資先の年間株価上昇率上位:東京エレクトロン72.6、丸紅63.17、KADOKAWA60など TOPIXは12.74%
- 良いインフレと悪いインフレ
① 現在のインフレは供給制約と労働市場のひっぱくから来ている。
② 良いインフレは景気が良く、所得が向上し、需要が増える状態
③ 悪いインフレはエネルギー価格の上昇が企業業績の悪化を招き景気後退に陥り所得が下がるコストプッシュ型
- 地政学的リスク
現在では特にロシア関連がする。
① ロシアによるウクライナ侵攻の地域的広がりと時間軸
② ロシアへの経済・金融両面での制裁の拡がりと時間軸
- 事前質問への解説
プロフィールなど
① 1979年関学法学部に入学されましたが、愛知ご出身で何故神戸へ?:
名古屋から関西の私学へは立命館が人気だが、おしゃれで洗練された関学を選んだ 国立はダメだった
② 在学中、勉学、趣味、クラブ活動を問わず、特にご興味を持たれた事は?その後の社会人生活に役立った事があれば教えて下さい。
サッカーは必ず留年すると聞き、他のスポーツでとテニス・スキーサークルに!
③ ご職歴を拝見しました。法学部のご出身で山一證券に1984年入社された経緯は?山一ではどんな仕事をされましたか?経営悪化の際は何をされてましたか?その後のメリルリンチでは何をされましたか?
1970年代は高校生で落合信彦の中東に関する本を読んだりしていたので就職は商社を第一志望に活動したが、冬の時代で、採用枠は15人、うち文系は10人と狭く、何か世の中で役に立つ職業でと証券会社に入ったが、生活は、毎日9時、10時まで残業しそれから飲みに行って、終電で帰宅するような生活。でも充実していた。
米国最大手証券メリルリンチの日本法人の立上げに参画
起業について
④ 渋澤健氏と初めて知り合われた経緯は?その後、一緒にコモンズ投信を起業された経緯をお聞きします
ネットで知り合い、金融の仕組みの変革を目指す事で一致し、会社の創業をともにする
⑤ 塩沼亮潤大阿闍梨とご親交されておられますか?
経営者として、心を整えることを目指して親交を深めている
⑥ 岸田総理は成長と分配の新しい資本主義を掲げていますが、これまでは分配ばかりでした。先日英国シティで資産所得倍増計画を発表しましたが、節税投資以外に何か期待は持てるでしょうか?
宏池会の先人で池田勇人は所得倍増を掲げた 岸田首相も20年くらいでの資産所得の倍増ができると唱える 渋澤会長も新しい資本主義を目指す会のメンバーとして、6月発表に向け参画している。
経済・金融について
⑦ 日銀は引き続き金融緩和を継続すると表明しました。他方世界はインフレの引き締めに舵を切っています。日本だけが大胆な金融緩和を続けていては、景気後退とインフレで行き詰まり、急激な円安が進み、国力が弱体化し、国民生活が破綻します。日銀は見直すべきでは?
米国では、コストUPに対応して賃金も増えて経済成長を続けているが、日本ではなかなか本格的な賃金上昇は起きないので、日銀はコロナ対策もあって、緩和姿勢を維持してきた。
⑧ 他方、日本病の根本原因の円高が終わり、円安は癒しになり特にハイテク産業などにプラスで、アメリカは中韓台のハイテクに対して日本の台頭を目論んでいるのではないか?
日本の財政について
⑨ 日本の借金はGDPの2倍に到達しましたが、デフォルトの恐れはないのでしょうか?アメリカの経済学者が提唱する新経済理論は日本の財政運営にも有効ですか?プライマリーバランスを放棄して、社会保障費や防衛費の2%に応じて貨幣を刷り、国の借金を問題にしないとの事ですが、講師はこの考え方をどう思われますか?
平時は大丈夫 有事の際には、ロシアがウクライナとの戦闘で通貨が一時暴落し、通貨防衛手段として金利を20%まで引き上げた。まだ国の負債が少ないので持ち堪えられるが、日本は国債の利払いが膨らむため金利があげられない。暴落の恐れが生じる。
資産づくりについて
⑩ 20世紀末に日本の金融市場も護送船団方式からビッグバンで規制緩和が進みました。アメリカではより多種な金融商品が作られて、巨大な金融市場が生まれ、欧州では統一通貨であるユーロが誕生して、英国はシティとしての権威を取り戻しました。日本の金融市場改革は成功したのでしょうか?
香港が中国の政策で信用が減少して金融資産がシンガポールに流れている。一部日本にも流れている。東京はこれから国際金融センターの地位を伺う
⑪ 未だに東京はアジアの金融センターとしての地位を実現出来ていませんし、国民の預貯金は投資へと向かいません。NISAやiDeCOは役立つのでしょうか?日本の地位はどうすれば高まるのでしょうか?
NISAなどは投資に大いに役立つ
証券市場などについて
⑫ 団塊世代にとり年金が生活の基盤ですが、その資金運営はGPIFに託されています。海外投資家が魅力がない日本に投資しないままでは、少子化とともに、年金制度が破綻しないでしょうか?
⑬ 証券市場はプライム、スタンダード、グロースへと改編されましたが、従来から何が改善しどう変わるのでしょうか?
海外の証券市場は米国S&P500社、英国FTSE100社、仏CAC30社など有力企業数は絞られるが、プライムはまだ、1800社以上と多すぎる。地方政治家の圧力が強すぎる。
その他
⑭ 多くの経営者に接して来られていますが、長期投資に適した成長する企業をどの様に見分けておられますか?
年間300社程度の経営者とお会いする。
長期的に魅力のある企業を「収益力」「競争力」「経営力」「対話力」の4つの力と「企業文化」を基準に判断する。
⑮ 小学生の金融教育に取り組んでおられますが、反応や手応えなど如何ですか?
⑯ 株式市場を取り巻く環境は非常に厳しいですが、いつ頃好転すると予想されますか?
今年の秋か年末からと予想。IMFの今年4月の世界経済見通しでは、2021、2022、2023年の各年で世界経済は6.1%,3.6%,3.6%、日本はそれぞれ1.6%,2.4%,2.3%で引き続き、低成長が続く。米国もインフレ率がこの約40年ぶりの上昇で景気の後退が懸念される。
1時間20分ほど講演の後、質疑応答いただいた。
- その後、半時間余り熱心な質疑があり、丁寧に一つ一つ講師からの解説を拝聴して午後6時過ぎに終了。その一部を紹介する。
① コモンズ30投信は銘柄の差替えや損切りは?
② 投資信託で損失を出した経験あり、高齢者で長期投資するのに疑問に思うが
顧客に86才で始めた方や93才と60代の親子で投資されている方もおられる
③ 投資に60代以上の年代が多いのは、若い世代は住宅ローンなどに資金を消費するからだと思う外がどうでしょう?
都市はやはり住宅優先だが、逆に地方は持家でローンは少ない
④ さわかみ投信の創業者の沢上氏は、これからはインフレの時代と主張される。株価はバブルとの見方は一部その通りで、預金だけだと金融資産の目減りがこれから生じるかも。
⑤ ESG投資が求められているが、企業の成長を論じると必ずしも得策ではないのでは?
今回のロシアへの経済制裁などをESGの観点でしっかり考えている企業もみられるが、そうでない企業もある。また、金融商品としてのESG投資にはなんちゃっての商品も多い印象なので見極め