E-News &Songs 2021年4月度活動報告           

                         月間リーダー 宮武捷二

コロナ禍の下、オンラインにて4月の例会をJapan Timesの記事「A demonstration of strength by the Japan-U.S. alliance - 日米同盟による強さの実証」を教材とし取り上げ学びの時を持ちました。

バイデン政権がスタートして2ヶ月あまり経過したがその間、日米の関わりに於いて二つの会議が持たれた。一つは3月12日オンラインによる日米豪印の4か国首脳会議(QUAD)、もう一つが3月16日日米両政府の外務・防衛担当閣僚が2対2で安全保障・防衛協力に関する幅広いテーマについて話し合う会議「安全保障協議委員会または2+2」である。 これに関して以下の点について討論した。

(1)QUADでは海洋進出を強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け4か国の協力を約束したがその成果は?

具体的成果は無いが、これからの課題である、ワクチン、気候変動、新技術に関する3つのワーキンググループの設立は成果の一つではないか。ワクチンに関しては米国製ワクチンを日米の資金援助のもとでインドが生産するー来年度までに10億回分製造する、オーストラリアが域内各国に供給するという国際分業を確立させ連携の実績を 作りクアッドの存在感を高めていくことを目指す。気候変動に関してはパリ協定履行強化のため協力、新技術については人工知能(AI)と機械学習、ロボットプロセスオートメーション(RPA)、量子コンピューティング、5G、IoT、サイバーセキュリティ、バーチャルリアリティと拡張現実、等々の研究協力を約した。インドに配慮しクアッドはNATOのアジア版に発展させる考えを否定しインドが加わり易い形を作った。

(2) QUADに続き2+2で日米は改めて互いの連携を確認。 米国は尖閣諸島の安全保障条約5条への包含、並びに核抑止力を含むすべての軍事力で日本防衛を約束した。2+2後の共同声明は中国の不正行為について具体的に批判し、「既存の国際秩序」と述べ、「中国海警局法は、この地域における最近の破壊的な進展に関する深刻な懸念を表明した。2018年中国海警局は中央軍事委員会指揮下にある人民武装警察に編入された。中国海警局法は2021年1月に制定され2月1日に施行された。この法は法が適用される海域の範囲や武力行使の範囲について曖昧さを残すなど国際法との整合性からも問題のある規定が含まれている。

(3)中国海警局法の要点

・適用範囲は、中国管轄の海域とその上の空域〈3条〉

・外国軍艦等による違法行為に関しては強制立ち退き等の措置を講じることができる。(21条〉。 

・国家主権や管轄権が外国の組織や個人に侵害された場合、武力の行使 を含むすべての必要な措置を講じることができる〈22条〉。

・暫定的な海上警戒区域が設定され船舶および人の通過および滞在が制限または禁止される場合がある(25条)。

・沿岸警備隊は、国際法や人民武装警察などの関連法と中央軍事委員会の命令に基づいて任務を遂行する必要がある(83条)―事実上の第2海軍化

(4)日本の対処状況

・船の数・装備で対応できない場合→海上自衛隊出動(イ)海上警備行動発令対処

・活動家・武装集団上陸した場合→(ロ)治安出動令発令→陸上自衛隊の出動

・(イ)、(ロ)は閣議決定を要する。タイムラグをどうカバーするか?

・領域警備法の整備→(イ)、(ロ)が発令される前の平時でも一定の条件の下で海保・警察と同様の活動を認める。しかし、海保(国土交通省)と警察(警察庁)に海上自衛隊が前面に出ることへの反対根強し。

・2月25日海保の武器使用明示。政府は25日中国海警局の船が尖閣諸島への接近・上陸を試みた場合、重大凶悪犯罪と見なして危害を与える「危害射撃」が可能との見解を示した。

(5)日米会談はCOVID-19、気候変動、北朝鮮の非核化、拉致問題の解決、ミャンマーのクーデター、台湾海峡での平和の重要性、世界の民主主義の強化、その他の懸念にも及び成功裡に終わった。地域の安全保障に関して米韓日の強固な同盟パートナーシップが必要とされており日韓の現在の紛争を乗り越え妥協を求められているが現在の相互の信頼度は低い。

(6)イージスアショアの展開終了という日本の決定はアメリカにとってショックであった。日本に対するミサイル攻撃の可能性は現実的であり2隻の新造イージス艦の配備による代替案は暫定的な解決策で、より効果的計画が必要との米側見解あり。

(7)東京では、米国の核政策の変更の可能性、特に「単回使用」ドクトリンの採用が懸念されている。これは、ワシントンが同盟国または米国自身に対する「実存攻撃」に応じてのみ核兵器を使用するという宣言である。この二つの政策意味は何か?

・「単回使用」は一騎打ち使用であり。実質行使しない可能性が高い。

・「実存攻撃」は国の危機存亡の時に攻撃することであり、これも実質行使しない可能性が高い。即ち米国、同盟国、パートナー国の死活的な利益を守るために極限的状況においてのみ核兵器の使用を考慮する。

・米国の従来の核基本政策は「核の先制不使用拒否」即ち先制使用権利を留保するというものであり抑止効果の実効性を信頼してきた。日米の治安当局は、上記の様な政策変更があまりにも制限的であり、それらの兵器の抑止効果を損なう可能性があることを心配している。そこで抑止が先行して実践力が見えない不満がでてきているので、これに対応するべく2018年2月2日トランプ政権は、戦略指針「核態勢見直し」(NPR, Nuclear Posture Review)を公表した。

これが変更のポイントである。

(8)今回の「核態勢見直し」は以下に貢献していると考えられる。

1)核・非核攻撃の抑止

2)同盟国及びパートナー国への保証

3)抑止が失敗した場合米国は損害をミニマムに抑え、達成可能な最良の条件で紛争を終結させる努力をする。

4)将来に対して備える(ヘッジ)能力

爆発力の小さい小型核など2種類の新型核兵器の導入、海上船舶配備型の核ミサイルの再開発への着手、現在の核弾頭運搬手段である以下3本柱の維持。

1)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)(SSBN)14

2)陸上配備型大陸弾道ミサイル(ICBM)400基

3)空中発射巡航ミサイル(ALCM)を運搬する戦略爆撃機52H 46機、B

2Aステルス戦略爆撃機 10

この関連で主要核保有国の基本的核政策を見てみると 

Countries pledging NO-FIRST-USE (NFU) : 中国/インド

Countries against NO-FIRST-USE (NFU)   :  米国/ロシア/英国/(仏国)(イスラエル、パキスタン、北朝鮮)(NFU)- 核の先制不使用

日米両政府は、核兵器について包括的な議論を行う必要性があり、それがEDDの目的である。EDD(Extended Deterrence Dialogue・二国間拡大抑止対話)は2010年から定期的に開催されており、この対話を通じて、米国の拡大抑止の受け手である日本政府は、ますます複雑化する安全保障環境下における米国の抑止政策と二国間調整について理解を深めることができる。

(9)バイデン政権は中国の軍事的脅威の急速な高まりへの危機感を2+2において示している。米国による核抑止力を含む日本防衛の約束は、一方、尖閣問題で中国への脅威を一層深めている日本との同盟関係をさらに強化することによって、これを中国に対する有力な対抗手段と位置付け、日本の防衛役割分担拡大に大きく期待していると思われる。これらを踏まえて今後の日本の取るべき備えはどうあるべきか?

1)日本のおかれた地政学的位置を再認識しハード、ソフト両面から国益を追求すべし。

2)グローバル経済に於ける、隣国中国の巨大なマーケットは無視できないが、サプライチェーンをバランスよくベストミックスで再構築する。諸条件を再考し、生産拠点を中国からその他の国へ移転、或いは日本へ回帰させる。重要技術の維持発展、新技術の開発。財界の目先の利益第一主義からの脱却、政府の賢明な指導も必要。

3)日本の防衛力・軍事力増強の必要性とそれを裏打ちする予算増強―これには自衛権に関する積極的解釈と究極的には憲法改正に対する国民の理解と支持、覚悟が必要。更に米国/米軍との同盟/連携を強化するも同時に日本独自の防衛戦略を構築すべきこと。

4)多角的な外交政策の策定と、それらの長期的実績を重ねる―日本の基本政策はPeace keepingであり多岐にわたる分野での活躍とそれを担う人材の育成とこれらを担保する長期的な予算措置が急務である。