11月例会は日経新聞の人気連載の「私の履歴書」がテーマでした。講師は初めてこの連載に外国人をとりあげられた元日経新聞記者の勝又美智雄氏と私の履歴書研究の第一人者吉田勝昭氏(41年卒)のお二人です。54名の皆様と共にあらためてこの連載の魅力を知ることができました。ご参加ありがとうございました。
○吉田勝昭氏の講演
1.初めに
吉田さんは社会人になってから私の履歴書を読み始め以来人生 の教科書として長く愛読してこられました。
2.「私の履歴書」の魅力
①仕事や経営のヒント、②先達の生き方、③芸術家やアスリートなどの違った世界を知ること、④いろいろな人世苦難の克服法、⑤健康法や近代史の裏面など
が、学べる。この5点にあります。
なお、この連載は1956年(昭和31年)にスタートし、63年間の登場人物は841人です。吉田さんは2017年12月までの819名の登場人物のコラムを分析し項目で分け人生の指針として役に立つように分類され『ビジネスは「私の履歴書」が教えてくれた』、『人生を私の履歴書から学ぶ』、『私の履歴書61年の知恵』という3冊の本にまとめられました。1冊目にはビジネスを2冊目では人生を3冊目では前の2冊では載せきれなかった楽しい話題を掲載されています。
これを検索になれている若い人たちにも活用してもらいたいということで、いままでの研究の集大成としてのご自身のホームページをリニューアルされました。タイトルは「吉田勝昭の私の履歴書研究」です。ビジネスのヒントを得たり困った時の克服法を知りたい時には、HPのほうが手軽に活用できますね。HPの全体の構成は、学ぶ、楽しむ、登場人物の分類、プロフィールにわかれています。
3.「学ぶ」では
①仕事のヒント;「売れる仕組みづくり」など、②経営のヒント:「経営の原点」「経営の優先順位」「事業の選別法」など、③人生のヒント:「幼児教育」や「両親のしつけ」など、執筆者の多くは父母のことを語っています。「健康法」としては旭化成の宮崎輝氏は散歩がいちばんという話など、④涙雨が美しい虹に:逆境や不況のなかでの対処法を採り上げています。
4.「楽しむ」では
①興味深い証言:例えば昔の独房と鈴木宗男氏の現在経験比較、②歴史的証言、③取材の裏側、④才女と美女、⑤サインとデザイン:冒頭の私の履歴書という文字はいつもご本人の自書です。これには皆さん苦労をされるそうで練習して一番いいものを渡されます。政治家は達筆のかたが多くなかでも宮澤喜一氏、細川護照氏などは印象的です。ユニークなのはアーティストです。ジョージ川口さんは歴の字に略字を使っています。長嶋茂雄氏の字は、脳梗塞後にリハビリを懸命にされ左手で一生懸命練習してかかれた字でした。
5.登場人物(今まで841名)の分類では、掲載順、生誕地別順、出身校、最終学歴順、業種別順などが紹介されています。いちばん多いのは東京、次に大阪、京都、兵庫です、学歴では東大卒が213人、我が関学は6名です。最終学齢が小学校の方は72名。執筆年齢の最高齢は97歳の北村西望氏で、90代はほかにも新藤兼人氏など何人もおられます。
このように見てくると興味がつきません。吉田さんの主宰しておられる研究会では取材記者にお話しいただく機会も設けておられます。
なお、吉田さんのホームページURLは、
https://biz-myhistory.com/ です。是非一度訪れてご覧下さい。
「私の履歴書」の魅力満載です。
○勝又美智雄氏のご講演
勝又美智雄氏は、日経新聞社に在職中、80年代日本経済の国際化が急速に進む中91年に初めて「私の履歴書」に外国人を登場させられた方です。私の履歴書は本人の了解を得てから記事になるまでに3ヶ月から半年はかかります。ご本人が自分で書かれるのは1年間の12人中2,3人で、ほとんどは秘書、広報部長、そして担当記者が資料を集め周辺取材をして書き上げて、その原稿を本人に見せ意見を聞いて最終的に仕上げるというかたちをとります。
しかしもともとこの「私の履歴書」の連載は拡販の役目を担っていました。株価中心の記事作りではあってもやはり人間が登場しないと面白くない。そしてスタートしたこの連載は評判がよく、自社の記事や株価のあとは朝刊最終面のページへが、ビジネスマンの読み方になっていきます。知人が登場すると関係者はうれしくなるので拡販効果が出ますが、外国人はどうかという懸念も周囲にはあったそうです。
以下3人の外国人について取材の裏話を紹介いただきました。
(1)フルブライト
外国人として初めての登場であるフルブライトなら知名度があり新聞の評価を高めてくれるのではないか。留学制度を作った人でもあり、利用した人は感謝しているということで彼に決定しました。連載が始まってみると評判がとてもよく懸念はふっとびました。
内諾を得たあと、すぐにワシントンに飛び、自宅での週に2回のロングインタビューを重ねた後、30回分のプロットをつくり相談したところ了解が得られました。当時のフルブライトは84歳、世界のフルブライト同窓会の事務局長の女性と再婚したばかり。インタビューのたびにお二人のほほえましいいやりとりがあったそうです。3人の娘さんはお相手が自分たちより年下ということで絶句されたとか。
翻訳調の文章をさけるためにまず日本語で書きそれを英文にしたものをファックスで送ってチェックしてもらうという方法をとられました。「フルブライトほどグローバルを体現していた人はいないと思います。あらゆる国、文化、人に対して偏見をもっていないのです。アメリカ人には珍しい(笑)。自分がえらいという上から目線はない人で、人柄がよく楽しい人でした」。
このインタビューはのちに『権力の驕りに抗して』という書名で出版されました。
(2)ジャック・ウエルチ
インタビューはナンタケット島の別荘やGE本社で行われました。ジャック・ウエルチはGEの会長で、すごい経営者として知られていますが、人間的に魅力がある人だと伺いました。当時弁護士の女性と再婚していました。1980年から20年間GEの会長で従業員は世界に50万人もいる最優良企業でした。2001年10月から掲載予定で第一回原稿は、9月7日の引退披露パーティの模様を中心に用意していたが、直前に起こったのが「9.11」です。事前に入手したスケジュールによると事件のときは車の中にいただろうということで書いた原稿をメールで送ったら、3日後に連絡がとれ、テレビ局のスタジオにいて、スクリーンで向かいのビルに飛行機が突っ込んだのを見たということでした。原稿はそこから始めることにし急いで書き直しをされたそうです。
「ゴーストライターは相手のことを忖度しながらやりとりをし、そのときに何を考えていたかを書く。おもしろい作業でしたね」とおっしゃっていました。
(3)ガースナー
ガースナーは経営コンサルタントで再建請負人のような立場で社長としてアメリカンエクスプレスを立ち直らせ、RJRナビスコ会長を経て、IBMの会長へと請われました。すべての部門で一位をとろうとして失敗し赤字に陥っていたIBMをさまざまな取り組みの実行により、復活大成功をおさめました。冗談もいわない、笑顔はインタビューの最後のみで、有能な超エリートビジネスマンでした。トップシークレットをかかえているので誘拐やテロにあうとアメリカは大変なことになるという立場。会長は誘拐の対象ということもあり、自分のことはいっさい触れなかったそうです。
勝又氏はこの3人を私の履歴書に登場させたことが日経新聞での誇りと語られました。私たちにとってもビジネス界でのもっとも評価の高い3人の取材の裏話を聞くまたとない機会になりました。
勝又氏の取材の裏話や吉田氏のリスペクトをもっての分析を伺い、この連載に人気がある理由がよくわかりました。
【以下当日のご案内文】
三日月会11月度例会は、元日経記者勝又美智雄氏と「私の履歴書」研究の第一人者である関西学院大学同窓生の吉田勝昭氏をお迎えして、三日月会初のコラボによる講演会を下記内容にて開催いたします。
「私の履歴書」63年間に登場した素晴らしい方々830名の楽しい話を吉田氏より賜り、元日経記者・勝又美智雄氏には留学生の父と呼ばれるフルブライト、20世紀最大の名経営者GEのジャック・ウエルチ、巨象IBMを踊らしたルイス・ガースナーの大物3人を取材した経験から、その人物像とエピソードを中心に講演を賜ります。
是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。
記
日 時:2019年11月20日(水曜日)14時30分~15時45分【14時開場】
開始時間が、8月より変更になっておりますのでお間違えのないようご注意ください。
場 所:関西学院同窓会本部 銀座オフィス
東京都中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階
アクセス:都営浅草線「東銀座」A8徒歩1分、銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅A12徒歩3分
http://www.etsuraku.co.jp/access.html
会 費:1000円 (小ペットボトルの飲み物を用意しますが、軽食の提供はございません)
講 師:勝又美智雄氏(国際教養大学名誉教授) & 吉田勝昭氏
勝又美智雄氏:1972年 東京外国語大学卒業後、日本経済新聞社に入社。社会部、国際 部を経てロサンゼルス支局長、編集委員。2004年 国際教養大学教授。2016年 ~ 現在 国際教養大学名誉教授、グローバル人材育成教育学会会長。
吉田勝昭氏: 1966年 関西学院大学法学部卒業後、日本ケミファ入社。 1995年 取締役就任後、常務取締役、専務執行役員を歴任。 現在 公益財団法人日本ユースリーダー協会 常務理事。
タイトル:『私の履歴書』の楽しさ、取材記者の苦楽(一部対談)
*申込締切 お申込みが定員に達しましたので締切日{2019年11月14日(木)}を待たずに締め切らせていただきました。多数の皆さまのお申込みありがとうございました。
*お問合わせ先:東京支部 TEL 03-6260-6277
【次回予告】12月度例会はK.G.クリスマスのため休会し、新春例会は2020年1月22日(水)開催の予定です。
以上