8月度三日月会は、同窓のカリフォルニアワインのオーナー兼ワインコンセプターの杉本隆英氏に、「幸せになりたければワインを飲みなさい」のタイトルで、ワインの企画、製造、販売から美味しい飲み方まで、ワインに関する逸話を伝授していただきました。43名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございました。
杉本氏の「日本とアメリカの架け橋になりたい」という思いで製造したワインは、世界的に評価も高く、JAL国際線ファーストクラスでも採用されています。
杉本氏は兵庫県の西脇市で生まれ、野球少年として成長しました。関学高等部でが野球部に入り広岡高等部監督とは同期で、一緒にプレーをされました。また2009年から2013年には、社会人コーチとして野球部の指導をなさっています。
大学で野球部に入るも、肩を壊して退部することに。そして大学も中退。数学が得意だったので、高校の数学の先生に相談すると、「数学を突き詰めなさい。そこで一流になれたら、他は必要ないか、必要な時は勝手に備わってくる素地ができている筈。今はコンピューターの時代だよ」と助言を受け、ソフトウエア開発の会社を紹介してもらいました。20歳前アルバイトで入り、そのまま就職してプログラマーとして数多くのシステムを構築しました。1984年インターネットに目覚め、94年、外資系IT企業に転職、そして44歳の時、全世界ナンバーワンセールスを達成されました。その時の副賞がカリフォルニアワインだったのです。
杉本氏はそれまでお酒を飲めなかったのですが、そのRobert Mondaviワインを飲んで、「こんな美味しい物があったのか!」と感激したそうです。
以後CWFC(California Wine Fan Club)を設立して、現地との情報交換をしながら、2005年51歳で、カリフォルニアで日本人向けのワイン造りを始めました。
日本人はワインといえば、フランスかイタリア産を好むのですが、雛鳥が最初に見た物を「親」だと思い込むように、最初に飲んだワインを「美味しいワイン」だと頭に刷り込まれたためかもしれません。
ワイン造りを始めたのは、娘さん二人の結婚式に名前のついたワインで祝いたいと思ったのがきっかけでした。社名をご自身の家紋である「違い鷹羽」(Chigai Takaha)のChを「シャトー」と読んで、あとの「イガイタカハ」と合わせて「シャトー・イガイタカハ」と名付けられたそうです。この黒家紋といい、「侍」「園」など漢字を使ったネーミングといい、日本文化へのこだわりが感じられます。
シャトーのあるサンタ・リタ・ヒルズはカリフォルニア州の南部、北緯35度の地点にあります。日当たりがよく、朝には霧が立つことで、温度差がワインに向いた葡萄を育てるそうです。
カリフォルニアワインの歴史はキリスト教に由来しています。約200年前スペインからメキシコに宣教師が布教に来て、カリフォルニアにまで北上し修道院を建設。ミサにはワインが必要なところからワイン造りを始めたそうです。
カリフォルニアワインが世界で知られるようになったのは、カリフォルニアワインの「パリスの審判」と呼ばれるある事件からです。1976年パリで、批評家を集めてワインのブラインド試飲会がありました。当然フランスワインが勝つと思っていたものの、1、3、4位をアメリカの白ワインが占めたのです。赤ワインも強豪のフランスを抜いて、堂々の1位でした。
杉本氏の経営する「Ch.igai Takaha(シャトー・イガイ・タカハ)」は、葡萄畑も醸造施設も持たない新しいタイプのワイナリーです。2005年に中学の同級生だった奥様と始められただけに、家族への愛が感じられる製品をたくさん造っています。子供さんやお孫さんの名前だけでなく、ご両親への感謝の気持ちを込めて、「おやじダンディー」、「おふくろビューティ」も出されています。
牛に焼印して個を特定することを「Branding」といいますが、杉本氏のワインの特徴はこの「Branding」にあると、尾崎牛の尾崎宗春さんは言われます。ワインは畑、葡萄品種、クローンなどワインメーカーとアイディアをコラボする「Blending」も大事です。新しいムーブメントを起こし進歩しながらも、既成のものと調和していく、そんな「Branding&Blending」企業を目指して行きたい、とおっしゃっています。こういうことが可能なのは、アメリカのワイン製造が分業化しているからです。葡萄を作る人、ワインを造る人、それを売る人、それぞれにスペシャリストがいるからできるのです。サンタ・バーバラは海の近くなので、ミネラルを含んだ葡萄ができ、日本の出汁文化とよく合います。例えば、「すき焼き」に合うワインとか、「平目の昆布締め」に合うワインとかを、スペシャリストの人たちと様々なコンセプトを出して話し合い、試行錯誤して造っています。
日本の甲州ワインをカリフォルニアで栽培してワインを造るというプロジェクトが2005年から始まりました。2010年に甲州葡萄が国際品種として登録され、15年にはカリフォルニアで栽培が開始されました。2017年に「加州・甲州ワイン」ができますが、ごく少量です。両方のよさを持った香りのいいワインだったそうです。2020年にはアメリカ大陸初の甲州ワインをリリースしたいとおっしゃっています。
今は日本酒も造っているということです。「ワインラバーにこそ飲ませたい」「熟成をも楽しむ」「香りをも楽しむ」「料理とも楽しむ」「ワイングラスで楽しむ」というコンセプトで造っています。日本酒は糖分がなく、水と酵母を加えて造るのでワインより造るのが難しいのですが、純米大吟醸は伊勢サミットでも使われて好評を博しています。低温発酵により時間をかけて造るお酒は、花のような香りがするということです。
ワインを飲む時愚痴る人はいません。ワインは人を楽しませ、人と人をつなぎます。自分も楽しみ、家族も楽しませるワイン造りを仕事にしておられる杉本氏。「マスタリー・フォア・サービス」の精神を生かして、今後も新鮮な発想でワイン造りに挑んでいただきたいですね。
高いワインを飲むとよりワインの美味しさがわかるそうですよ。
杉本さま、貴重なお話ありがとうございました。少しだけ、ワイン通になることができました。
【以下ご案内文】
葡萄畑も醸造施設も持たない新しいタイプのワイナリー『シャトー・イガイタカハ』のオーナー兼ワインコンセプターとして、カリフォルニアワインの企画・製造・販売を手掛ける杉本隆英氏は、ご自身の家紋をラベルにした黒家紋ワインの『TOKIMEKI』シリーズや『Dragon Beauty』、JAL国際線ファーストクラスで採用されている漢字一文字のワイン『侍』、『園』を世に送り出し、日米の懸け橋になりたいとの思いで、日常的にワインを楽しむ文化を作っていきたいと熱く語っておられました。当日は、ワインの奥深さについて、じっくり語って頂けると思います。
是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。
記
日 時 :2019年8月23日(金曜日)14時30分~15時45分【14時開場】
*今月から開始時間が、変更になっております。お間違えのないようにお願い致します。
場 所 :関西学院同窓会本部 銀座オフィス
東京都中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階
アクセス:都営浅草線「東銀座」徒歩1分、銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅徒歩3分
*松屋通りと昭和通りが交わる角、左手のビルで、1階にファミリーマートが入っています。
(アクセスマップ) http://www.etsuraku.co.jp/access.html
会 費 :1000円 (小ペットボトルの飲み物を用意しますが、軽食の提供はございません)
講 師 :杉本 隆英(すぎもと たかひで)氏 シャトー・イガイタカハオーナー
1954年 兵庫県西脇市生まれ
1972年 関西学院高等部卒、関西学院大学経済学部入学
外資系IT企業の日本代表を歴任後、
2005年 中学時代の同級生だった奥様と二人でカリフォルニアにてワインを製造、輸入、販売を始める。
<受賞>世界的な評価基準『パーカーポイント』95点を獲得し、その品質は高く評価されている。
タイトル:『幸せになりたければワインを飲みなさい』
*申込締切 2019年8月15日(木)(お申込みは締切ました。)
*お問合わせ先:東京支部 TEL 03-6260-6277
【次回予告】9月度例会は、9月26日に元警視庁捜査一課長光眞 章氏にご講演を賜る予定でございます。
以上