今年は「平成」が終わり、新しい元号が始まる歴史的な年を迎えます。2019年新春例会は、元号の歴史と改元のプロセスについて、大東文化大学文学部教授の宮瀧交二先生にご講演いただきました。二度目のウェインライトホールでの開催にお集りいただいた42名の皆さまも、ユーモアを交えての先生のお話に大いに盛り上がり新しい元号に思いを馳せました。ご参加ありがとうございました。

 「元号」と「年号」はどう違うのでしょうか。

 年号と元号は基本的には同じ意味です。年号とは、年数の上に良い漢字を複数冠して年を表す称号のことです。この年号は、いろいろな理由で改元されてきたので、元(はじめ)の年を指す元号とも言われます。「明治」の改元で「一世一元」となって以来、元号が公称とされています。現天皇は、平成31年4月30日限りで譲位され、新天皇(現・皇太子)の下で新元号がスタートします。

 元号の始まりは中国・漢の武帝が、即位の翌年(紀元前140年)を「建元元年」としたのが最初です。武帝は亡くなるまでの54年の間に、11回改元しています。

 元号の数は中国(唐~清)が189、日本(大化~平成)が247で、日本の方が多いのですが、使用された文字の種類は中国が148、日本が72と、日本の方が少ないのです。採用元号の重複(「建武」「太平」など)は中国では数回みられますが、日本ではありません。中国との重複も避けました。

 現在年号が使われているのは日本だけです。中国では清の滅亡(1911年、孫文による辛亥革命)により元号は廃止され、「中華民国元年」としましたが、中華人民共和国では採用しないで西暦を使っています。ただし台湾では継続され、今年は「中華民国紀元108年」になります。

 「魏志倭人伝」には、「景初3年」に倭国・卑弥呼が使いを送って来たと記されています。卑弥呼もこの「景初3年」を使っていたと思われますが、その後倭国内では元号ではなく干支を使っていたようです。

 日本初の元号は「大化」(645年)とされていますが、650年に「白雉」と改元、さらに36年後に「朱鳥」と改元されていますが「日本書紀」には「白鳳」「朱雀」と表記されています。国として必ず元号を用いるようになったのは、大宝元年(701年)に大宝律令が制定されてからです。

 以後、天皇の即位による代始めの改元が継続されるのですが、それ以外に祥瑞(めでたい前兆・吉凶)の出現による改元、例えば慶雲5年(708年)に武蔵国から純銀(和銅)が出たため、「和銅」と改元された、などがあります。江戸時代の明和9年(1772年)は「めいわくねん」と読めるため、「安永」と改元されたこともあります。

 さて、改元はどのように行われるのでしょうか。

 昭和54年(1979年)に元号法が成立して、元号は政令で決める、また、皇位の継承があった場合に限り改める(一世一元)と定められました。

 元号選定の手続きとして、まず漢学者などから成る考案者若干名が数案を官房長官に提出します。次に総理府内政審議官が検討・整理して法制局長官協議で精査・選定され、考案者とは別の有識者8名と衆参議長4名が意見徴収と開陳を行い原案として官房長官に提出します。閣僚会議で原案の協議をしたのち、臨時閣議で政令として決定、天皇が公布され「新元号」として国民に公布されます。

 元号選定のための留意事項として次の6点が挙げられます。

 1)国民の理想としてふさわしいような、よい意味を持つものであること

 2)漢字2字であること

 3)書きやすいこと

 4)読みやすいこと

 5)これまでに元号またはおくり名として用いられたものでないこと

 6)俗用されているものでないこと

 元号の出典は中国の古典(「四書五経」など)が多く、昭和は「詩経」の「百姓昭明、協和万邦」から2文字取られています。今後は日本の古典(聖徳太子「十七条憲法」や嵯峨天皇の漢詩など)を出典にしてもよいという考えもあり、どんな元号になるか楽しみです。

 新元号は4月1日に公表されるわけですが、新元号にまつわるエピソードもたくさんあります。

 運転免許証から元号を外し西暦に一本化しようとした警視庁と、元号を使用したいという市民が対立し、最終的に「2019年(平成31年)」のような両者併記となりました。

 元号と西暦の併記については、京都大学、同志社大学などでは、「西暦の方が便利」ということで、入学願書を西暦限定記入とする立場を取っていますが、元々キリスト教系の大学では学内文書は西暦を用いることが多かったようです。

 私元号というものもあるようです。ある出版社は広島・長崎に原爆が投下された1945年を起点として、本の奥付に「核時代◯◯年」と記しています。天理教では、開かれた年である1838年を紀元として「立教◯◯年」と記されています。

 20181224日、現天皇は記者会見の席上で以下のように言及されました。

「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」

 今後、平成はそのような時代として記憶に残ることでしょう。

【以下ご案内文】

  新年明けましておめでとうございます。本年も三日月会にご支援、お力添えを賜りますよう
何卒よろしくお願い申し上げます。
 さて、2019年1月新春例会は、大東文化大学文学部教授の宮瀧交二先生をお迎えし、『東アジアと日本の元号の歴史と改元のプロセス』と題してご講演いただきます。

「平成」という元号も、来年「平成31年」をもって新元号に変わることが決まりました。

 そもそも元号は、中国、漢の時代に用いられて以来、中国や日本をはじめとするアジア諸国で歴史を重ねてきましたが、今では日本だけがこれを用いています。5月に新しい元号を迎える年の新春にふさわしく、東アジアや日本の元号の歴史についてはもとより、新元号の制定に際しての改元のプロセスをそれぞれの興味深いエピソードなどをまじえて紹介していただきます。

 なお、会場は、昨年6月にも使用致しました、1906年に帰米するまで関西学院にて勤務されていたSamuel H. Wainright教授の名前を冠した銀座教文館書店ビル9階ウェンライトホールでございます。

是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。

日  時 :2019116日(水曜日)133014451300開場】 

場  所 :教文館書店ビル9階 「ウェンライトホール」 東京都中央区銀座4-5-1

      9階ホール入口前に「三日月会受付」(13:0013:25)を設置

・教文館への地図・アクセス案内(次のURLをクリック)

https://www.kyobunkwan.co.jp/map 

会  費 :1000 (小ペットボトルのお茶を用意しますが、軽食の提供はございません) 

講  師 : 宮瀧 交二(みやたき こうじ)氏:大東文化大学文学部歴史文化学科教授

 1961年 東京都生まれ。1986年 立教大学大学院文学研究科修了。2008年新潟大学大学院現代社会文化研究科博士課程 学術博士。専門は日本古代・中世史、博物館学。2003年埼玉県立博物館主任学芸員を経て現職。2017年NHKテレビ ブラタモリ「大宮編」案内役で出演。

 編著書:「歴史を読む」、「人物、事件でわかる日本史」、「図解90分でおさらいできる常識の日本史」(監修)、「古代東国の地方官衙と寺院」(共著)他多数。 

タイトル :『東アジアと日本の元号の歴史と改元のプロセス』 

*申込締切 2019年110日(木)締切りました。お申し込みありがとうございました。                

尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無いようにお願い申し上げます。

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226

【次回予告】三日月会2月度例会は、2月20日(水)を予定しております。

以上