三日月会2018年8月度例会は、朝日新聞東京本社デジタル編集部記者の寺下真理加様をお招きし、『最後の担当編集者が見た日野原重明先生』と題してご講演いただきました。
日野原重明先生は昨年7月18日に逝去されました。朝日新聞の土曜版「be」に掲載されていた先生のエッセー「あるがまま行く」の2012年から5年間担当編集者だった寺下真里加記者に、皆様のあまりご存知のない話を含め先生との思い出の数々を声色も交えたくさんお話しいただきました。62名の皆様と共に先生のことを偲ぶまたとない機会になりました。多数の皆様にご出席いただきまことに有難うございました。
先生のエッセーは、2002年91歳になられてからスタートしました。寺下記者は先生の最後の5年間に関わられたことになります。先生とはまずフォーレのファンとして意気投合されたそうです。びっくりしたのは100歳で土日もなく働いておられる姿です。いったいどういう人なのだろう。原稿はいつもストックがあり、移動時はひざの上のラップデスクでずっと原稿を書き、終わると音楽に合わせ指揮の練習をされる。のんびりとかこっくりするというようなことはないのです。
先生には魅力の3本柱がありました。まず真面目なキリスト教徒であり、家族への深い愛情をもち、自分のできることを社会に還元するため極限までストイックに努力なさったこと。キリスト者として勤労は自己実現ではなく神様への正しい態度であり、自分を通して平和や長寿の理念を広げておられるのだということに後で気づきます。
先生にはつらい思い出がありました。京都帝大付属病院のときに担当した自分は死ぬということに気づいた結核性髄膜炎の16歳の少女に「頑張れ」以外の言葉が思いつかなかったことです。それが医師として患者の死にどう寄りそうかの思いの出発点になり、車椅子になっても聖路加病院の緩和ケアに通われました。
先生は医師であると同時に文化人で、おしゃれでユーモアのあるエンタテイナーでもありました。洋服の着こなしもかっこよくて明るい色のスーツを着て背すじをのばし、遅咲きのカリスマという言葉がぴったりでした。子供がすこし羽目をはずしたような振る舞いのときもありました。創造的、実践的な生き方を体現され高所恐怖症なのに101歳のときはマンハッタンの上をヘリで飛び、103歳では乗馬体験もされました。
語り部としての才能もお持ちでした。時におじいちゃんの語りのスイッチが入ることがあります。今日は京大時代の話といわれるとそれだけで話に引き込まれます。文章がお上手なだけではなく語りもうまく、学生時代に進級させないことで有名な鳥飼教授の試験の前に厳しい鳥飼先生に当たらないように友人たちととり鍋を食べたことや英文学の授業に代返を頼まれ授業で「チャタレー夫人の恋人」を原書で読まれたそうです。代返させた当人は映画で見たのにねと愉快そうに話をされました。奥さまのことが大好きでアメリカにいった時、デパートでGMの家電と婦人売り場に一人で行かれて、コルセットをお土産に買われたそうです。こんなに講演会でも少人数の打合せのときでも話のおもしろい人ははじめてでした。
最後に寺下記者が先生に会われたのは3月上旬でした。その前年の秋ごろから大きな講演は難しくなり、弱りがでてきましたがこの日は大変お元気で1時間アメリカでの留学時代の話をされました。実はジャンクフードもそのころはお好きだったそうで、フライドチキンやコーラがきっかけで話がはじまりました。3等船室での旅で、外の空気を吸うためにコーラスのピアノ伴奏を買ってでたことなど若いころの楽しい話がでましたが、人種差別も身をもって感じられたこともあったようです。
この日、娘さんが用意されたシュークリームを二口で召し上がり、クリームのついた紙を渡され家族のような雰囲気につつまれ心のなごむ時間だったそうです。
「あるがままに行く」の最後の原稿は5月下旬に口述で準備をされていて、7月に届きました。字数もぴったりで7月29日の葬儀のときに会場で配られました。
参加者の皆様には先生の『最後まで、あるがまま行く』をお持ち帰りいただきました。表紙は白衣の先生の笑顔です。選りすぐりの44本が載っています。「読者の皆さまに最後のごあいさつ」という標題のついた最後のエッセーも記載されています。講演に参加できなかった方もどうぞ機会がおればお読みいただければと思います。
「以下ご案内文】
三日月会2018年8月度例会は、朝日新聞東京本社デジタル法ン社2012年から最後の編集部記者の寺下真理加様をお招きし、下記の内容で開催いたします。寺下様は、5年間、朝日新聞の土曜日の別刷り「Be」に連載されていた日野原先生の「あるがままに行く」の担当編集者としてかかわられました。日野原先生は最期の時まで「自分への厳しさ」を失われなかったといいます。昨年の7月18日ご逝去から1年がたちました。皆さまの心の中でいつまでも生き続ける日野原先生。先生と寺下様との出会いから生まれたエピソードを通じて、先生の晩年の生き方をお話しいただきます。是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。
記
日 時 :2018年8月28日(火曜日)13:30~14:45【13:00開場】
場 所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール
千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階
サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(13:00~13:25)を設置
会 費 :1000円 (小ペットボトルのお茶と日野原重明先生著「最後まで、あるがまま行く」(朝日新聞出版)1冊付き)
講 師 :寺下真理加(てらしたまりか)氏:朝日新聞東京本社デジタル編集部 記者
1978年生まれ。東京都練馬区出身。2002年、朝日新聞社に入社し、初任地の青森総局、04年さいたま総局などをへて、09年に文化くらし報道部に異動。放送担当、音楽担当などを務める。11年秋に土曜版be編集部へ。そこで任された仕事が、日野原重明先生の「あるがまま行く」担当編集者。今年4月からデジタル編集部に異動。朝日新聞デジタル版(7月17日)『日野原先生、見てますか 引き継がれる「いのちの授業」』は寺下様が執筆された記事です。
タイトル:『最後の担当編集者が見た日野原重明先生』
*申込締切り 2018年8月23日(木)に締切りました。多数の皆様のお申し込みありがとうございました。
尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無いようにお願い申し上げます。
*お問合わせ先:東京支部 TEL 03-5224-6226
【次回予告】三日月会9月度例会は、9月26日に開催する予定でございます。
以 上