3月例会は上野の西洋美術館で開催中の「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」を12人で鑑賞しました。スペイン絵画の黄金期にフェルペ4世の絶大なる庇護の下、大活躍したベラスケス(1599-1660)の作品が7点も含まれる展示会です。鑑賞後、「韻松亭」で昼食会、楽しい歓談のひと時を持ちました。

下段に引用があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下はこの展示会関連の記事からの抜粋です。

芸術の都「セビリア」
 1599年、ベラスケスはスペイン王国セビリアで生まれました。この頃のセビリアは、新大陸アメリカとの唯一の貿易港として、西ヨーロッパで最も繁栄を誇っていた国際都市。世界中から人々や品物が多く集まり、芸術品もまた多数持ち込まれていました。当時、オランダ絵画が発展していたフランドルや、バロック芸術の中心地だったイタリアなどから、たくさんの芸術作品が持ち込まれていたのです。

 そのためセビリアは、首都マドリッド以上にスペインで最も芸術活動が盛んな都市でもありました。17世紀のスペイン絵画黄金時代の三大巨匠であるベラスケス、スルバラン、そしてムリーリョを輩出したのもセビリアです。

ディエゴ・ベラスケス「東方三博士の礼拝」1619年

 10歳で絵画修業を始めたベラスケスは、やがてセビリアの画家組合の総裁だったパチェーコに弟子入りし、画家としての技術だけでなく、古典文学などの教養も身につけて行きました。そして、7年間の修行の後、画家として独立。同時に師パチェーコの娘フアナと結婚し、名実ともに独り立ちしたのです。

ベラスケスとフェリペ4世

 17世紀のスペインではイタリアのように芸術家という概念が浸透しておらず、画家はレンガ職人や大工と同じように職人と見なされていました。しかし、義父パチェーコは画業を高尚な職業と考え、画家の地位向上を願っていたため、その影響をベラスケスも大きく受けます。そして彼は、画家としての最高位、すなわち宮廷画家になることを願うようになるのでした。

ベラスケスが描いたフェリペ4世の肖像画

 そのベラスケスにチャンスが訪れたのは、1623年のこと。16歳で即位したばかりの若き新王フェリペ4世を操り、内政も外交も全て一手に取り仕切る、スペインの真の権力者であったのがオリバレス公伯爵でした。このオリバレス公伯爵と、義父パチェーコと交流があったこともあり、公伯爵の口利きでベラスケスはマドリッドの宮廷に迎えられ、正式にフェリペ4世の宮廷画家に任命されたのです。

 フェリペ4世の寵愛を受けるようになったベラスケスは、宮廷画家兼職員という立場でその生涯をフェリペ4世に捧げることになります。二人は王と宮廷画家としての垣根を越えて深い信頼で結ばれ、ベラスケスは生涯で34点ものフェリペ4世の肖像を描きました。

ベラスケスに影響を与えた「バロック絵画の王」ルーベンス

 そして、ベラスケスに運命の出会いが訪れたのは1628年のこと。「バロック絵画の王」であるルーベンスが、外交使節としてマドリッドを訪問したのです。偉大な美術コレクターであったフェリペ4世は、すぐにルーベンスに信頼を置くようになり、宮廷のあったアルカサール(城)内にアトリエを持つことを許します。

 29歳のベラスケスにとって、22歳年上の同じく宮廷画家でもあるルーベンスとの出会いは、芸術的にも多大な影響を受けただけでなく、人間としても良きロールモデル(お手本)となったのです。ルーベンスの薦めで二人は一緒にスペイン王室が誇るティツィアーノのコレクションを模写し、豊かな色彩を誇るティツィアーノの影響を受け、ベラスケスの色調も明るさを増していきました。

 そして、ルーベンスの影響を受けたベラスケスは、かつてルーベンスが8年間過ごしたイタリアへ向かうことを決意。憧れのイタリアで、若き日のルーベンスのように古典芸術の模写に励み、芸術の都ローマに1年ほど滞在します。自由奔放な古代の神々であふれたローマは、キリスト教と厳しいエチケットに支配された暗いマドリッドの宮廷とは対極にあり、ベラスケスはローマで精神的な自由を満喫し、創造力の翼を広げていったのでした。 

セビリア時代のベラスケスの作品には、激しい光と影のコントラストや、伝統的な理想主義とは真逆の写実主義などに、当時のイタリアのバロック絵画を牽引したカラヴァッジョの影響が表れています。プラド美術館展で来日する「東方三博士の礼拝」はこの影響が見て取れる作品だといえるでしょう。ちなみに、この作品の三博士のモデルの二人はベラスケスと義父パチェーコで、聖母のモデルは妻フアナ、そして幼子イエスのモデルはベラスケスの生まれたばかりの娘とされています。

ベラスケスの生涯に触れられる「プラド美術館展」

 ベラスケスの仕えたフェリペ4世は、王室の絵画コレクションをより充実させ、現在のプラド美術館の礎を築いたことで知られています。そのサポートをしたのがベラスケスで、宮廷画家の仕事は王家の人々のために絵画制作をするだけでなく、王室の美術コレクションの管理、そして新たな美術品収集と宮殿装飾もその仕事に含まれていたのです。

 2月24日から国立西洋美術館で開かれる「プラド美術館展」は、ベラスケスの作品が7点も来日するだけでなく、敬愛する先輩画家ルーベンスの作品や、二人で模写したティツィアーノ、ベラスケスと親交のあったスルバラン、そしてベラスケスがフェリペ4世のために発注したクロード・ロランの理想的風景画など、ベラスケスの生涯で縁があった多くの作品が来日します。プラド美術館が誇る昔日の巨匠たち“オールドマスターズ”の魅力を、ベラスケスの生涯に重ねあわせて堪能されることをお勧めします。