2018年1月の新春例会は1977年理学部卒の日本フィルハーモニー交響楽団第一ヴァイオリン奏者である松本克巳さんに、ご自身の音楽活動と日本のクラシック音楽の黎明期を支えた山田耕作、大澤壽人、貴志康一の三人の作曲家について素敵な演奏を交えてお話しいただきました。85名もの皆さまのご参加ありがとうございました。 

 講演は美しいヴァイオリンの調べから始まりました。曲は第2校歌の「緑濃き甲山」です。空の翼はみなさんご存知ですが、この旋律の美しい曲も山田耕筰作曲です。 

 松本さんの所属しておられるのは日本フィルハーモニーで、方向性の違いから新たにできたのが新日本フィルハーモニーです。ここは企業と共に歩むという道を選び、日本フィルは地域にでかけて音楽を届けるなど市民と共に歩む活動を始めました。松本さんご自身も積極的に参加されている神戸や福島の被災地へのボランティア活動はその経緯の中から生まれました。 

 次に3人の方々の関学や音楽との関わりについてお話しいただきました。 

山田耕作オルガンを好んだが6歳のころ居留地で初めてピアノの音をきき、音楽家を志す。姉の夫のイギリス人から西洋音楽の手ほどきを受ける。1902年に関西学院中学部に転校しグリークラブと野球部に所属。中学部では吉岡院長の教育に接する。作曲を始めたのは16歳のころ関学校内で夕日を見て作品1を書いたその後東京音楽学校予科に入学。作曲・指揮法を学ぶ。山田は「からたちの花」などの作品で歌曲の作曲家として知られていますが、実は彼がいないと今の日本のオーケストラ曲はなかったというほど活躍をされた方です。日本でもオーケストラを持つことを提唱し、東京フィルハーモニーを立ち上げ、その後近衛秀麿と日本交響楽協会を設立。 

校歌の「空の翼」「緑濃き甲山」「A Song for Kwansei」等を作曲。  

大澤壽人は、幼い頃から日曜学校に通いオルガンの音や賛美歌に親しむ。1920中学部に入学。グリークラブに所属。指揮・伴奏・独奏で活躍。中学部時代からハミル日曜学校でオルガン伴奏。作品第1集を書く。高商部ではオーケストラ部に所属。ピアノを習得。マスタリーフォアサービスを音楽で体現したいと決心する。ベーツ院長の勧めでボストンに留学。24歳のときにバイオリンの曲をかく。ボストン交響楽団で自作の交響曲を指揮。世界では、様々な音楽家から高い評価を受けたが、帰国後の演奏会では分かってもらえず、以降日本人にわかりやすい曲に路線変更する。 

山田より20歳下の大澤壽人は、中央講堂で開催された山田耕筰の講演と音楽会を聴き、OB山田は、まさにまぶしいほどに輝ける存在であった。 

応援歌弦月を作曲。 

昨年9月3日に日本フィルハーモニー交響楽団による“戦前日本のモダニズム”~忘れられた作曲家、大澤壽人~の演奏会が開催され、交響曲1番をサントリーホールで演奏された。80年前の作品の世界初演であった。 

貴志康一は、大澤の3歳下でほぼ同世代の関西の作曲家である。貴志康一は芦屋の裕福な家庭に生まれ、絵を書くことを好んだが色覚異常がわかりヴァイオリンを始める。音に対する感性は3歳のころからあった。16歳で別れの歌をつくり独唱。甲南高等学校高等科を中退しジュネーブに。24歳でヴァイオリンのために曲を書く。ヴァイオリニストを志すが日本文化を伝えるために日本的は感じを作曲に反映していく。1931年関西学院中央講堂で「慈善大演奏会」を開催している。日本芸術映画協会をつくり日本文化を紹介する映画を作る。ベルリンフィルで自作を演奏。  

 なお、現在、大澤の作品は、戦後教鞭をとっていた神戸女学院ですべて保管され、いままた作品が再評価されています。貴志の作品は甲南記念館に。一方山田の作品は戦争ですべてが焼失してしまいました。  

 日本にクラシック音楽が根付くまさにそのときの状況を、美しい演奏を交えながら関学に身近な作曲家たちの活躍を通して教えていただきました。  

聴かせていただいた演奏 

山田耕筰 「緑濃き甲山」 

     「荒城の月」 この曲の伴奏は山田の作曲  

     ヴァイオリン独奏用の「からたちの花」 

大澤壽人 応援歌 「弦月の下に」 

     NHKの番組から 「桜に寄す」 

貴志康一 「ナイトモノローグ」 

     「竹取物語」

【以下ご案内文】

  2018年念頭を飾る三日月会は、本学理学部卒業のヴァイオリンニスト松本克巳氏をお迎えいたします。今回は、『トーク&ライブ~松本克巳の音楽活動と3人の作曲家~』と題して、松本克巳氏のこれまでの音楽活動と関西学院出身の作曲家山田耕筰と大澤壽人、甲南出身の貴志康一の各氏についてのお話しとそれぞれの皆様の作品を素敵なヴィオリン演奏でお楽しみください。是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。

日  時 :2018年1月31日(水曜日)12151330

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

      千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(11:3012:10)を設置。

会  費 :1,500円(軽食は11:45から講演前にお出しいたします。)

講  師 :松本 克巳(まつもとかつみ)氏

      日本フィルハーモニー交響楽団1stヴァイオリン奏者

1953年山口県宇部市生まれ。1977年関西学院大学理学部遺伝子学専攻卒業。渋谷高校の理科教師を経て1980年日本フィルハーモニー交響楽団に入団。入団以来意欲的に行なっているソロや室内楽の演奏活動は、年数十回におよび、コンサートホールだけに留まらないすそ野の広い丹念な演奏活動は高く評価されている。阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災など被災地をいち早く訪ねて、鎮魂と励ましの響を伝えている。2000年、日本フィル在籍20年という節目を機にリサイタルをカザルスホールで、以降2年毎に、東京文化会館、横浜みなとみらいホールにて開催。好評を得る。横山莞五、石井啓一郎各氏に師事。

CD:ソロアルバム「ヴァイオリンと薔薇のロマンス」、「シャコンヌ・花舞」。

  松本克巳ヴァイオリンリサイタルライブセレクション 2枚組BESTアルバム。

タイトル :『トーク&ライブ~松本克巳の音楽活動と3人の作曲家(山田耕筰、大澤壽人、貴志康一)~』

*申込締切日{2018年1月25日(木)}前ですが、定員に達しましたので、お申し込みは、締切りました。

尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無いようにお願い申し上げます。

 

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226  FAX 03-5224-6227

【次回予告】三日月会2月度例会は228日に筑波大学数理物質系物理学域教授の中井直正氏をお招きして開催する予定でございます。

以上