2月の三日月会例会は「治さなくてよい認知症」というテーマで本学OBでもあります日本医科大学の上田諭先生にご講演いただき、83名の皆様にご来場いただきました。ありがとうございました。このテーマは非常に皆さんの関心が高く早々に定員に達し、ご参加いただけなかった方にはご迷惑をおかけしました。申し訳ございませんでした。
上田先生は学生時代はヨット部に所属し主将として活躍されました。卒業後朝日新聞の記者として勤務されたのち北大の医学部に進学されるという異色の経歴をおもちです。今は日本医科大学付属病院精神神経科の医師として、主に高齢者の認知症の方々の診療にあたっておられます。ご本人と介護にあたる家族双方のために「治さなくてよい認知症」という考え方を提唱され、同名の著書も上梓されました。治さなくて良い、というのは医師が治すことを諦めているのではありません。認知症はなおす方法はありませんが、認知症でも元気で楽しく生きることはできるのです。そんな社会を実現させたいというのが先生のポリシーです。
参加者自身が高齢になるにつれ家族だけではなく、自分のことも不安になってきますが、まず加齢と病気の見極めのサインを教えていただきました。最近あったことを忘れる、予約や約束を忘れる、リモコン操作を忘れるなど。内容を忘れるのはよくあることですが、約束自体を忘れるのは問題です。
認知症のリスクファクターは加齢です。厚労省の報告によると、85歳くらいになるとほぼ2人に一人が認知症になるそうです。このうち約7割はアルツハイマー病の軽度から中等度の方です。
世の中には認知症の予防法やこうすれば治るという情報も氾濫しています。認知症にも種類がありよくなるタイプのものもないとはいえませんが、ほとんどのものは治りません。家族はなんとか治ししたいと思い、叱咤激励しがちです。それでも効果があがらなければ改善をあきらめ、こんどはなにもわからないと決めつけ、自尊心を逆撫でする言動をとります。これらの対応によって患者さんは気落ちし不安になり、自尊心がもてなくなり、どんどん症状は悪化していくのです。まわりの介護対応がよくも悪くもするのです。
治らないと知っていればこんなに辛い日々をおくることはなかったという家族の言葉をきかれたこともあるそうです。
治療としてはデイサービスや趣味や楽しみを見つけ、まわりもプライドを傷つけないように心配りをし、昼夜のリズムをある生活を送ってもらうようにします。補助的には進行を短期間遅らせるクスリもあるし、寝つきをよくしたり、いらいらや不安を和らげる漢方薬もあります。
アルツハイマー病には確実な予防はありませんが、有酸素運動や楽しめる趣味をもつことは大切です。特に糖尿病はアルツハイマーのリスクを高めるので食生活は節制しましょう。血管性認知症の予防のためには原因となる脳梗塞や、脳出血を防ぐために生活習慣病にならないように気をつけます。アルコールにも要注意です。禁酒はすぐにできる治療・予防法だそうです。
「治る認知症(認知症そっくりの状態)」は薬害やアルコールによるもの、硬膜下血腫、うつ病、ビタミン欠乏症などで、それらの見極めのためにも不安なことがあればまず地域包括支援センターや「物忘れ外来」「認知症を見る精神科・内科」などの専門科に受診してください。
最後に接し方のタブー
・指摘しないー逆効果になります
・議論しないー妄想や幻視を否定しない
・怒らせない、怒らなない
もっと詳しく知りたいかたはぜひ先生のご著書をお読みください。
『治さなくてよい認知症』日本評論社刊
『不幸な認知症 幸せな認知症』マガジンハウス刊
認知症はこわいものと思っていましたが、アルツハイマー病でも講演をしたり原稿を書いたりできる方もあるそうです。正しく知ることで、意味のなく恐れることはないということがよくわかりました。
ありがとうございました。
【今回のご案内】
いつも三日月会にご支援賜わりまことにありがとうございます。さて、先にご案内致しております三日月会2017年2月度例会につきまして、都合により、開始時間、開催場所、会費等下記のとおり変更させていただきたく、緊急のお詫びとお知らせを申し上げます。
2月14日(火)の開始時間が、12時15分より13時15分に繰り下げさせていただきます。時間変更により、軽食の準備はございませんので、お昼はお済ませの上ご参加ください。従いまして、参加費は1000円とさせていただきます。また会場が、サピアタワー10階丸の内キャンパスから同じビルの4階会議室に変更となります。突然の開催内容変更となり、多大なご迷惑をおかけしますことを心より深くお詫び申し上げます。何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。なお、既にお申し込みの方で、今回の時間変更によりご参加が難しい方は、お忙しいところ大変恐縮ですが、kg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpに、ご返信賜りたくお願い申し上げます。
記
日 時:2017年2月14日(火曜日)13:15~14:30
場 所:ステーションカンファレンス東京 千代田区丸の内1-7-12サピアタワー4階
サピアタワー1階からエレベーターで直接お越し下さい。
会 費 :1,000円(軽食の準備はございません。お昼はお済ませの上、ご参加ください。)
講 師 :上田 諭(うえだ さとし)氏 日本医科大学精神医学教室講師
1957年:京都府生まれ。1981年:関西学院大学社会学部福祉専攻、体育会ヨット部主将時にインカレ個人優勝。卒業後、朝日新聞に入社し記者として勤務。1990年:一念発起し朝日新聞社を退社し、北海道大学医学部に入学。卒業後、東京医科歯科大学精神科、東京都老人医療センター精神科などに勤務。2007年:米国デューク大学メディカルセンターで電気けいれん療法(ECT)研修修了。
2007年:日本医科大学付属病院精神神経科に勤務。
主に高齢者のうつ病と認知症の診療と研究。
著書:「治さなくてよい認知症」(2014,日本評論社)、「不幸な認知症 幸せな認知症」(2014、マガジンハウス)など
翻訳書(共訳):「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(2013,星和書店)、
「パルス波ECTハンドブック」(2013, 医学書院)など
タイトル: 『治さなくてよい認知症』
今、なぜ認知症がこれほど話題になっているのかというと、人が長寿になったからです。認知症の7割を占めるアルツハイマー病の一番の危険因子は、食事や生活習慣ではありません。年をとることです。認知症には根絶療法はないし、確実な予防法もありません。この現状で大切なことは認知症を恐れ嫌うのではなく、誰もが進んで受け入れていくこと、悲観せず張り合いのある生活を送ることです。周囲が症状を責め、治そうとすることでさらに症状はひどくなります。そのままでよいと受け入れることが大切なのです。人が幸せな認知症を生きられる社会になるかどうかは、私たちが認知症をどうみるかにかかっています。
*申込締切 満席となりましたので、お申し込みは締切りました。有難うございました。。
*お問合わせ先:東京支部 TEL 03-5224-6226 FAX 03-5224-6227
【次回予告】 2017年3月度例会は3月15日(水曜日)
講師:近藤康介氏(全国紙記者)
以上