【講演の概要】

 三日月会2016年6月度例会は、長谷工総合研究所上席主任研究員の吉村直子をお迎えし、「シニア期の生き方・住まい方〜在宅生活から住み替えまで〜」と題してお話をいただきました。高齢化社会は避けられない問題として間近に迫っています。最も関心のある事柄ということで72名の皆さまがご参加くださいました。ありがとうございました。

 2008年をピークとし日本では人口が減少し、生産年齢人口が減り高齢化が急速なスピードで進んでいます。現在、総人口に占める65歳以上人口の割合は27パーセントで、高齢化率は世界でトップです。東アジアを中心とする国々も深刻な高齢化問題をかかえ日本の対応が注目を集めています。日本人の平均寿命は世界一を誇っていますが、長寿に伴う要介護や認知症などの増加で、健康寿命との差が大きく開いているのも問題です。

 高齢期の居住の選択肢には2つあります。「今の住宅に住み続ける」、あるいは「住み替える」の2つです。

 「住み続ける」場合は、戸建では高齢者用に改修が必要になるかもしれません。分譲マンションでは建物の維持や建て替え、管理組合への参加義務などがあります。

 「住み替える」場合、一般の住宅か、高齢者住宅・施設という選択肢があります。一般の住宅には、都心のマンション、郊外や田舎などライフスタイルへのそれぞれの嗜好により決められるようです。高齢者住宅・施設にも選択肢があります。

 在宅で住み続けたいときは目的によって、様々な介護サービスが利用できます。訪問介護、訪問看護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、デイサービス、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などです。また、介護保険が利用できるサービスとして、住宅改修、福祉用具のレンタル、購入があります。

 マンション(集合住宅)居住については、建物の老朽化と共に居住者の高齢化が進んでいます。特に郊外のニュータウンなどでは居住者の半分が高齢者という場合があり、資産価値も下がっています。マンションでの高齢化対策としてはマンション内で賃貸者も含む自治会を作り、自助、互助を目指し、地域社会とのコミュニティ運営、防災、高齢者援護などを若い世代も含む居住者主導で取り組むシステムを作ることで資産価値の維持も望めます。

 高齢者住宅への住み替えについては元気なうちに住み替える場合と、介護が必要になってから住み替える場合があります。それぞれのニーズに合わせて選択肢が異なります。

 日本の高齢者住宅には、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、ケアハウス、認知症高齢者グループホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設があります。選ぶ時は、サービスと費用の関係をよく調べる必要があります。

・高齢者住宅選びの基本姿勢として以下の点を注意します

(1)入居者本人の希望やニーズの確認。(2) 時間的・精神的な余裕のないまま、慌てて探さない。(3)十分な情報収集をしないまま、いきなり見学から始めない。(4)その場で気に入って、いきなり入居の決断や契約をしない。(5) 事業者の説明を、よく理解・確認する

 高齢者住宅選びは早めの情報収集や勉強、現地見学などの行動を起こすことが重要です。立地や建物、サービス、費用、事業者との契約などの情報の収集と整理が欠かせません。

 必要なのは早めの対策です

 元気なうちから高齢期の生き方・住まい方を考えておく。日頃から家族とよく話し合っておく。

 日本の公的医療保険・介護保険は世界的にみても優れた制度だが、権利の内容、範囲を過信しない。

 共助・公助に頼るだけでなく、自助・互助の仕組みを家庭や地域コミュニティできちんと作っておく。

 分譲マンションでは管理組合機能の維持が重要。若年世代も含めた多世代連合で乗り切っていく。

(6)介護関係の情報収集は時間をかけて慎重に。いざという時慌てないために、日頃から勉強しておく。 

 吉村さんは奈良女子大で住居学を専攻され、高齢者施設の視察の経験から高齢者の生き方、住まい方の研究をライフワークになさっています。歯切れのいいわかりやすいお話で、今後を考える上で大変有意義な講演を聞かせていただきました。ありがとうございました。

【以下ご案内です】

三日月会2016年6月度例会のご案内

三日月会2016年6月度例会は高齢者住宅事業のエキスパート吉村直子氏をお招きし、『シニア期の生き方・住まい方 』について、ご講演頂きます。

介護保険制度の開始から16年。近年は、「医療から介護へ、施設から在宅へ」という考え方のもと、在宅での継続居住を支援する仕組みを構築するための施策が進められています。その一方で、昨年11月に政府が打ち出した「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」では、2020年代初頭までに50万人分以上の高齢者住宅・施設や拠点型施設を整備するとの方針が打ち出されました。さらには、首都圏の高齢化問題(高齢者の急増による医療・介護機能の不足)を解消するという名目で、都市部の高齢者を地方に移住させるという日本版CCRC構想を全国に広げようとする動きも出てきています。

人口減少と少子高齢化が進行し、大幅な経済成長も見込めない中、シニア期に誰とどこでどのように暮らすのがよいのでしょうか。在宅生活や高齢者住宅への住み替えなど様々な選択肢を示しつつ様々な角度から解説して頂けると思います。多勢の皆様のご参加をお待ちしております。

日  時 :2016年6月22日(水曜日)12:15~13:30

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(11:30~12:10)を設置。

会  費 :1,500円(軽食は11:45から講演前にお出しいたします。)

講  師 :吉村直子(よしむらなおこ)氏/株式会社長谷工総合研究所 上席主任研究員

1986年福岡県立修猷館高校卒業。1990年奈良女子大学家政学部住居学科卒業。1992年奈良女子大学大学院家政学研究科(住環境学専攻)修了。1992年 (株)長谷工コーポレーション入社。1994年(株)長谷工総合研究所に出向。2012年より現職。

大学時代より高齢者の居住環境に関する研究に取り組む。有料老人ホーム入居者の生活実態に注目し、ハード・ソフトに対する満足度が生活環境や事業主体に対する評価にどうつながっているかについて全国各地のホームで調査を実施。現在は、高齢者住宅事業に関わる制度・政策や市場環境の評価・分析、事業計画立案のための調査・研究、コンサルティングに携わる。

著書に「実践“高齢者の住まい” ~医療・介護・住宅からのアプローチ~」(創樹社、2010年、共著)、「福祉住環境コーディネーター検定試験 1級公式テキスト 改訂4版」(東京商工会議所、2016年、共著)他。

タイトル :『シニア期の生き方・住まい方 ~在宅生活から住み替えまで~』

*申込締切は、6月16日(木曜日)(締切厳守)です。人数に制限がございますのでお早めにお申込み下さい。尚、出席される方のみお返事を頂きますようお願い申し上げます。

*お申し込み方法:お申し込みは締切りました

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226  FAX 03-5224-6227

【次回予告】 7月はフェスタのため三日月会はお休みです。8月はいつもどおり開催致しますので日程・内容等が決まり次第ご案内致します。

以上