【ご講演の概要】 

 20165月度の三日月会は沢井成美様をお迎えし、『今中東を考える-歴史的視点から』と題して、ご講演をいただきました。中東に長年駐在されご自身の体験からいまの中東の混迷について語っていただきました。57名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございました。

 中東についての数々のニュースが日々新聞テレビで報道されています。なかなか理解できないことも多いのですが、オスマン・トルコから説きおこされ、今回のタイトルどおり歴史的観点からの中東問題の謎ときを聞かせていただきました。

 沢井様は1972年から1886年まで14年にわたってサウジアラビア、アブダビ、カイロと途中で本店勤務も含め、中東と関わってこられました。アラビア語研修生として英国の外交官などのために設立されたアラビア語やアラブ事情を学ぶ機関で1972年から2年間学ばれました。アラビア語の例として出されたのは、ISISの旗の説明でした。旗の上部には「アッラーのほかに神なし」、「白丸の中にはモハメッドはアッラーのメッセンジャー」と書いてあるそうです。これがイスラムの根本哲学です。

 中東と関わってこられた14年間は、第4次中東戦争(産油国にイニシアティブが移る)からイラン革命(シャーからホメイニへ)、エジプトとイスラエルの国交開始、ソ連のアフガン侵攻(ゲリラを米国が組成)、逆オイルショックまでの期間です。ここでひとつの時代が終わりました。

 このご体験を踏まえていまの中東の混迷について触れられました。中東の状況を理解するためには歴史を遡る必要があります。1922年に中東全域を支配していたオスマン・トルコが崩壊し、その後トルコ以外は英仏の植民地になりました。その後の独立の線引が今のISISの元になっています。オスマン・トルコの500年の支配がうまくいったのは各地方の民族、言語、宗教を尊重するゆるい支配だったからです。この支配システムをミレット制といいます。崩壊後、自由に行き来をしていた地域に英仏が無理に線引きし、その結果3000万人のクルド人がトルコ、シリア、イラク、イランに分かれることになりました。しかし今オスマントルコの版図が回復つつあるように見えます。イラクの北部西部、シリアの東部西部北部を合併してISISとするというのは昔に返っているのです。ナセル、フセインのいたころはそれなりに落ち着いていたのに米国のイラク侵攻をきっかけに液状化状態になってしまいました。

 混迷のもう一つの原因は沃野のレバント地方のイスラエル建国です。パレスチナを分割して1948年に独立宣言をしました。強引にアラブ人から土地をほとんど略奪したのです。イスラエルは民族主義を標榜する国民国家で、ミレット制にはないヨーロッパの近代主義を背負ったユダヤ人がヨーロッパで迫害され中東に国をつくったのです。それ以来アラブ諸国はイスラエルと敵対しています。今後の状況は予想がつきませんがアラブ連盟の22カ国がゆるい連邦制ができればうまくいくかもしれません。しかしイスラエルがある限りあり得ないでしょう。

 ここで伺った知識をふまえて今後の中東情勢を注視していきたいものです。

【以下当日のご案内です】

三日月会20165月度例会のご案内

 三日月会20165月度例会は、三井物産における中東のエキスパートとしてご活躍された沢井成美氏をお迎えし、『今中東を考える-歴史的視点から』と題して、ご講演をいただきます。1969年三井物産に入社後、研修生としてレバノンに赴任されてから2009年にご退職、主として鉄鋼貿易部門及び海外業務部に勤務され、この間幾度も中東に駐在され、現在の中東情勢の背景となっている出来事が講演者の中東駐在期間中に起こった出来事が原型となっています。その後も中東情勢に興味を持って更に研究を続けてこられており、歴史的視点から中東を論理的に解説して頂けると思います。多勢の皆様のご参加をお待ちしております。

日  時 :2016524日(火曜日)12151330

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階
      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(11:3012:10)を設置。

会  費 :1,500円(軽食は11:45から講演前にお出しいたします。)

講  師 :沢井 成美 氏(さわい しげはる)氏

19693月 同志社大学卒業、

同年4月 三井物産入社(主として鉄鋼貿易部門及び海外業務部にて勤務)

19726月 研修生としてレバノンに赴任、9月アラビア語学校入学

19743月 サウジアラビアのジェッダ事務所勤務

19754月 帰国後、本店勤務

19786月 UAEのアブダビ事務所勤務

198012月 帰国後、本店勤務

198212月 エジプトのカイロ支店勤務

19866月 帰国後、本店勤務

20093月 三井物産定年退職

タイトル :『今中東を考える-歴史的視点から』

*申込締切は、519日(木曜日)(締切厳守)です。人数に制限がございますのでお早めにお申込み下さい。尚、出席される方のみお返事を頂きますようお願い申し上げます。

*お申し込み方法:お申し込みは締切りました。
 

同窓会東京支部の kg.tokyo@nifty.com へのメール返信では、申込み受付出来ませんのでご了承ください。

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226  FAX 03-5224-6227 

            Email kg.tokyo@nifty.com  

 

 【次回予告】 三日月会6月度例会は622日(水曜日)

  講師:吉村 直子 氏(株式会社長谷工総合研究所 上席主任研究員)

  タイトル:『(未定)介護関連の話題』を予定しています。

以上