2025年三日月会3月例会は、NPO法人首都圏防災士連絡会の副理事長で本学法学部卒の甘中繫雄様をお迎えして、阪神淡路大震災から今年が30年という節目でもあり、また3月11日は、東日本大震災が起こった日であることから、「自然災害から命を守る為には?(地震編)」というテーマで、災害に遭遇した時に私たちができることは何かを、多くのデータと映像を用いて分かり易くご講演いただきました。29名の皆様にご参加いただき、誠にありがとうございました。
【ご講演の概要】
今、豪雪、住宅火災、岩手県の山火事といった気象災害が起こっています。昨年の1月には大きな被害をもたらした能登半島地震が発生しました。日本では災害が多発しています。
・防災は、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの2つに分けられています。
リスクマネジメントとは危機が発生する前に回避し被害を最小限に抑える事前対策のことです。クライシスマネジメントとは、危機は必ず発生するものという前提に基づき、初期対応や二次被害の回避、小さくするための事後対応のことです。私たちの行っている水・食料の備蓄は、事後対応であり、地震に対して建物の耐震補強、家具の転倒防止、寝ている部屋を安全にするなどは、事前対策になります。
・防災をどのように考えたら良いのでしょうか。
完全な防災対策は無いと言われています。私たちは、防災は日常生活の一部であると考え、災害を見て、読み、聞き、知って災害の知識を増やし、各地で起こっている災害を自分のこととして捉え、普段から災害に対して関心を持つことが重要なのです。これをフェイズフリー、防災の日常化と呼んでいます。日常生活において、歩きやすい靴を履くとか水や飴などをバッグに入れておくことなども、防災に繋がっていることなのです。
・地震が起こる仕組み
地球の外側の地殻という5~60kmの厚みのある固い岩盤の上に、我々は住んでいます。この岩盤が十数枚に割れており、その1つ1つをプレートと呼び、日本には4つのプレートがひしめき合っています。日本の地震はプレートの境目で起こっていることが分かっています。太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込んで、陸地を圧迫していくと、エネルギーが耐え切れなくなって、地震や津波が発生するのです。地震や津波が起こり、エネルギーが解放されると、次の瞬間から再びエネルギーが貯まりだすので、地震は、周期的に、必ず起こるのです。
・日本で発生した大地震と今後発生が予測されている巨大地震の被害想定
地震災害で経済的損失が大きいものを大震災と呼び、日本では関東大震災、阪神淡路大震災、東日本大震災の3つがあります。これらの災害の地震規模(マグニチュード)、直接死、災害関連死、経済被害規模等の数値を示していただき被害の大きさが理解できました。また今後発生が予測されている巨大地震が2つあり、首都圏直下地震と南海トラフ地震です。今までの大震災とは比較にならない大きさの被害が想定されています。
・災害を受けた方々の生活再建のための災害に関する法律と地震保険
- 災害救助法(災害直後の応急的な生活の救済)・避難所・仮設住宅・生活用品
- 災害対策基本法(防災計画、災害予防、災害応急対策)・避難勧告・避難指示・警戒区域の設定
- 被災者生活再建支援法(自立して生活再建が困難な方に)・現金給付(使途を決めない渡し切り方式)
被災した方に100万円支給されますが、申請しないと支給されないので必ず罹災証明書を貰っておく必要があります。法律で公的な援助はあるのですが、日本の災害対応は、自分の命は自分で守る「自助」が基本です。
地震で火災が多く発生しますが、地震による火災では、火災保険からは保険金は支払われません。火災保険付帯の地震保険に加入していれば支払われます。火災保険の加入率が70%に対して地震保険は35%と低いのです。これは、自分は地震に遇うことはないと思っている人が多いということなのです。地震は、いつ起こるか分からない災害なので、地震保険の加入は重要なのです。
・能登半島地震の被害
津波、火災、液状化、道路の決壊、地滑りなどの災害が起こったのですが、地域によって被害が違っていました。またライフラインの途絶、インフラの寸断、偽情報の多発、高齢化率50%の村落が多かったことなど特徴のある大きな災害でした。能登半島を逆さまにすると、千葉の房総半島と同じ形になります。もし房総半島で地震が起こったとしても、能登半島と同じことが起こることが想定されるのです。
【最後に】
物理学者の寺田寅彦さんは「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す」と明治時代に予言されています。今まさにそのことが起こっているのです。
防災には完全な対策はありません。自然の力を制圧することは不可能で、自然と共生することが重要なのです。災害の防災力を高めるためには、防災を日常生活の一部であると考え、普段から災害に対して関心を持ち続ければ、意識が変わってきます。そうすれば見えない世界が見えてきて、行動ができるようになるのです。災害をイメージして備えることが、防災力を高めることになるのです。フェイズフリー(防災の日常化)が、自然災害から命を守る為に私たちが出来ることなのです。
関西学院同窓会東京支部会員の皆さまの多くは、阪神淡路大震災や東日本大震災を経験した方が、多くおられると思います。今回のご講演で、フェイズフリー(防災の日常化)という意識を教えていただきました。世界では、様々なものが進化してきているにもかかわらず、地震に関しては、まだ発生予知が出来ないのです。私たちは地震には無力だと感じていましたが、出来ることがあることを知り、防災を再認識させられました。大切なお話、ありがとうございました。
【以下開催時のご案内の抜粋】
三日月会3月度例会はNPO法人首都圏防災士連絡会の副理事長、そして研修統括部長として、個人やその家族が自然災害から自ら命を守るために必要な知識や行動について「防災講演・研修」を全国各地で企画・実施 されている甘中繁雄氏に登壇いただきます。地震列島日本、1995年「阪神・淡路大震災」発生から30年が経過しました。以降、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震と巨大地震が多発し、多くの命や財産が奪われました。どうすればこういった自然現象から命を守れるのか?自分の住んでいる地域ではこんなことはあり得ない。自分と家族だけは絶対大丈夫!という思い込みや偏見を私達は持っていないでしょうか? 地震発生は避けられませんが少しの知識と情報を得ることで自然災 害に対する意識が変わり、被害を軽減出来ます。それによりあなたと家族の命が助かる確率が上がるのです。阪神・淡路大震災、東日本大震災と2度に渡る甘中氏の被災経験と、多くの被災地調査やボランティア活動から感じたこと、重要なこと(命を守る・被害を軽減する・被災した際の対応・国の支援制度等)が盛り込まれており皆さんの生存スキルが高まる内容です。 未来の安全を守るため、是非この機会に正しい地震防災知識を身につけてください。 ご家族、ご友人との参加も大歓迎です。より多くの方々のご参加をお待ち申し上げております。
記
日時 : 2025年3月1日(土曜日) 14時30分~15時45分 【14時開場】
場所 : 関西学院同窓会本部 銀座オフィス 東京都 中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階
アクセス : 都営浅草線「東銀座」 A-8出口徒歩1分銀座線・丸の内線・ 日比谷線「銀座」駅A-12徒歩3分
会費 : 1000円 〈小ペットボトルの飲み物を用意致します。〉
講師 : 甘中 繁雄(かんなか しげお)氏
1951年兵庫県出身、 1974年法学部卒業 西宮市の自宅で阪神・淡路大震災に被災したことを原体験として、防災士養成事業に参加する。NPO法人日本防災士機構理事、NPO法人日本防災士会常務理事として、数々の災害現場での調査活動やボランティア活動を基に、全国各地で「防災研修」を計画・実施し、地域の防災力向上に取り組む。現在はNPO法人首都圏防災士連絡会副理事長として、自治体や企業での防災講演会、避難所開設運営訓練やBCP作成支援等、防災教育や訓練に積極的に取組み、減災社会の実現に向け活動している。令和6年能登半島 地震では石川県穴水町に置いて、内閣府避難所支援リーダーとして避難所運営支援とボランティア活動を実施、継続している。特定非営利活動法人日本防災士機構 理事 2018年特定非営利活動法人日本防災士会 常務理事。2022年 特定非営利活動法人日本防災士会 参与2022年 特定非営利活動法人首都圏防災士連絡会 理事。2024年 特定非営利活動法人首都圏防災士連絡会 副理事長(現職)。
以上