2月の三日月会は縄文学者の岡村道雄様に「私の縄文的生活」をテーマに講演をお願いしました。岡村様はNHKのラジオ深夜便で月に一度縄文文化について語っておられます。当日は自在な語り口で日本の壮大な歴史をお話しくださり、はるかな昔に思いを馳せ日本人の精神文化について改めて認識を新たにしました、34名の皆さまご参加ありがとうございました。

【ご講演の概要】

 岡村様の名刺の肩書きには「杉並の縄文人」と書かれています。新潟県上越市のご出身で、縄文との関わりは小学生の頃から。裏山には縄文遺跡があり、そこで土器や石器に触れ卒業文集には将来縄文学者になりたいと書かれたそうです。東北大の大学院・助手を経て、文化庁の調査官として各地の発掘現場を回られました。1975年から全国で遺跡の発掘が始まります。今、年間7、8000箇所で発掘をしています。全国の遺跡は46万箇所、知られていないものを入れれば100万箇所の遺跡があると言われています。生活条件の安定したところには必ず遺跡があります。

 日本の旧石器時代の始まりは4万年前です。祖先はまず朝鮮半島から渡来し、その後もツングース、当時高原だった南シナ海からも人々はやってきて、各地に定住していきました。日本人は多民族国家なのです。小平市の鈴木遺跡は日本でいちばん古い旧石器時代の遺跡です。

 旧石器時代の後の縄文時代は約1万年続きます。明確な違いは土器を作り使用したこと。縄文遺跡9万箇所のうち85%は北海道北東北にあります。旧石器時代以来、神様に感謝し一貫して自然と共生してきました。土地は所有せず、森は切り開かずに育てました。三内丸山遺跡では樹木はすべて栗です。自然林では栗は本来少ないのですが、ここでは栗の花以外の花粉は出ていません。栗は実を食べるだけでなく、建築材としても使い皮に至るまで全部使いました。いいとこどりはしていません。糸魚川のヒスイは三内丸山でも発見されました。交易ではなく交換経済で、相手と仲良くし、共に尊敬し合いながら輪になって暮らしていました。日本人の基本はここにあります。

 弥生時代の区分は水田耕作と鉄の使用です。森を開き、土地を所有し、鉄で農具を作る、多く所有することで権力を持つ人が出てきました。日本の歴史は権力者の歴史で庶民は出てきません。弥生時代の遺跡は縄文とは別で西高東低になります。

当日いただいた資料で縄文時代の暮らしが見えてきました。遺跡から出土したものから当時の食べ物がわかります。植物の種実、昆虫、魚、シカ、ノウサギなど変化に富んだ食生活です。竪穴住居跡などから起こした当時の暮らしの復元図を見ると縄文人の暮らしがよくわかります。

 岡村様は杉並の縄文人として縄文人の気持ちがわかるかと考え、庭に自生しているヤマノイモやドクダミ、ヤブカンゾウを食べ、ツルマメで納豆を、自家製味噌も作っておられます。スマホや時計も持たず体内時計を頼り、できるだけ自分の五感と体で動く縄文的生活の日々だそうです。私の縄文生活のプリントに詳しく書いていただいています。和食の基本も縄文にあるようです。

 当日いただいた資料でも縄文時代の暮らしが見えてきました。遺跡から出土したものから当時の食べ物がわかります。植物の種実、昆虫、魚、シカ、ノウサギなど変化に富んだ食生活です。竪穴住居跡などから起こした当時の暮らしの復元図を見ると縄文人の暮らしがよくわかります。

 日本人には自然と共に生きるものという精神があります。それは縄文からはるかに伝えられてものだったのです。これを大事にしたいと改めて感じました。縄文時代は今も私たちの中に生き続けているのですね。縄文時代は原始人ではないという岡村様の言葉に納得です。

【以下開催時のご案内の抜粋】

三日月会2月度例会は「杉並の縄文人」と名刺で肩書を記され、奥松島縄文村歴史資料館の名誉館長の岡村道雄氏に講演をしていただきます。最近の古代史ブームの背景には発掘技術や放射性炭素年代測定、DNA分析などの科学技術の進歩により、これまで解明されなかった古代史の新たな事実が次々と明らかにされています。一方2021年に、縄文時代前期から中期にかての三内丸山遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されて以来、日本の縄文時代が世界的に脚光を浴びています。火焔土器や土偶に注目が集まりがちですが、同時に漆や製塩、アスファルトの利用など今の暮らしの原点も縄文時代にあります。縄文人はどんな暮らし方をして1万年の平和な時代を生きたのか。自然と共存した暮らしとはどういうものか。興味は尽きません。縄文時代の研究者で同時に実践者でおられる岡村道雄先生に「私の縄文的生活-特に薬食同源の食生活を中心に-」というテーマでお話ししていただきます。 今の時代の見直しに通じる視点を教えていただけそうです。気候変動や社会的混乱が続く中、古代の人々が環境や社会の変化に適応していたかを私達は知りたいと思います。

是非、多くの皆様のご参加をお持ちしております。

日時 :  2025年2月1日(土曜日)   14時30分~15時45分 【14時開場】

場所 :  関西学院同窓会本部 銀座オフィス   東京都 中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階

アクセス : 都営浅草線「東銀座」A-8出口徒歩1分銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅A-12徒歩3分

会費 :  1000円 〈小ペットボトルの飲み物を用意致します。〉

講師 :  岡村 道雄(おかむら みちお)氏  1948年 新潟県上越市生まれ  東京都杉並区在住

           東北大学文学部卒業 同大学院文学研究科修士課程修了後、同大学文学部助手、東北歴史資料館考古研究科長、文化庁文化財部記念物課埋蔵文化財部門文化財調査官、同主任文化財調査官、独立行政法人奈良文化財研究所平城京跡調査部長、同企画調整部長を歴任。退官後の現在、国立文化財機構奈良文化財研究所名誉研究員、東松島市奥松島縄文村歴史資料館名誉館長のほか各地の遺跡の調査や保存に関わる指導員等を務める。 近著には「縄文の列島文化」山川出版社、「縄文人からの伝言」集英社新書がある。 文化庁時代には現在も例年開催の全国巡回展「発掘された日本列島-新発見考古速報」を初めて企画立案。毎月第4火曜日にNHKラジオ深夜便で「縄文夜話」の出演、近年話題の縄文時代をテーマにしたフリーペーパー  「縄文ZINE」の監修、You Tubeチャネル「JOMONおかむらTV」での発信など、広く縄文文化の普及に努めている。