2025年最初の三日月会1月例会は、丸の内キャンパスでの開催で、関西学院大学教授であり様々な場で幅広くご活躍されています村尾信尚先生をお迎えして、「岐路に立つ日本」というタイトルで、ご講演をいただきました。57名の多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございました。

【ご講演でのポイント】

(1)世界の大きな潮流の背景としてGDP(国民総生産)がある。GDPは全ての経済活動の基になっているもので2005年と2023年で世界の主要国の世界に占めるGDPの比率を比較すると、日本はどんどん低下している。

(2)日本の食料自給率は、主要5か国(日本・米国・英国・ドイツ・フランス)の中で最低である。日本の農業人口は、高齢化が進み、20年後は、5分の一になると予想されている。農林水産省は、食料安全保障上の危機感を持っている。

(3)電源構成については、日本は化石燃料(石油・天然ガス・石炭)に依存しており、一次エネルギーの自給率は13%しかない。電源として原子力発電所は世界で紛争が続く中、ミサイル攻撃の標的になる可能性がある。自給率を高めるために、脱炭素化を進め、再生可能エネルギーや水素によるものを考えなければならない。これらは供給が不安定なことから蓄電池の開発も必要である。エネルギーの安全保障の方向性と一致するものであり、日本の生命線を守ることになる。

 (4)2016年イギリスのEU脱退。アメリカのトランプ大統領誕生。いずれも自国優先の考えで生じたものである。またイスラエルのガザへの攻撃、ロシアによるウクライナ侵攻は、他人ごとではないと考えなければならない。

(5)経済成長は、労働人口の増加と労働生産性の上昇によってプラスになる。日本の経済成長をプラスにするために、日本の労働人口を増やさなければならない。人口が今後減少していく日本にとって深刻な問題である。

・2070年の日本の人口は、8700万人になると予想されている。毎年78万人が減少していくと考えられ、人手不足が顕著になっていき、GDPはさらに減っていくという状況になる。このような状況で若い人達は、子供を育てて良いのかと考えている。根本的な問題を議論して対策を打たないといけない。出生率の低下は、先進国共通の課題である。

・人口減少のもう一つの提案として、外国からの人を増やすことがある。日本で外国生まれの人の全人口における割合は、先進国で最低である。人口減少が進む中、外国人の受け入れを考える必要がある。一方で外国人を多く受け入れている先進国では、移民排斥運動が起こっているので、これは、難しい選択であり、充分に議論をしていかなければならない政策である。

(6)日本の労働生産性(企業活動による労働者1時間当たりの成果)は米国に比べ低い。なぜ生産     性が上がらないのか。

(7)我々には、日本の社会を変える二つの券、投票用紙と日銀券を持っている。どう使うのか。

(8)日本の財務状況は、一般政府純債務残高/GDP:2024年推計値によると日本が先進国の中で155.8%と一番高い。ドイツは45.6%である。日本は身の丈に合った借金(国債)をしているのか。

(9)2025年度予算は、116兆円、税収は78兆円(税収の86%)借金が29兆円となっている。借金残高は1,129兆円(税収の14年分)。日本の借金は膨大で、増税などで解決することは難しい。必要なのは、国民の信頼を得て、財政の透明性と真摯な議論であると考える。

【最後に】

村尾先生からのメッセージです。「私はこれからの世界と日本について悲観的な見方をしていますが、それでも私たちの努力次第で事態は好転するとの楽観的な意思は捨てていません」

分断や多極化、気候温暖化などの深刻な問題を抱える世界の中で、日本の国民総生産の世界に占める割合の低下、食料と一次エネルギーの自給率の低さ、人口減少の予想、経済成長の停滞、国の借金の多さなど多岐にわたって脆弱な日本の状況をグラフやデータを基に解説していただき、今後の日本再生の道と課題についてご講演をいただきました。しっかりと理解することできました。村尾先生からのメッセージを考える時、私たちは、何とかなるではなく、選挙権と銀行券を使うことによって、私たちも政策に反映させることは出来ると思いました。政治に関心を持って日本の将来を見ていきたいと思います。貴重なお話、ありがとうございました。

【以下開催時のご案内の抜粋】

三日月会1月度新春例会は、関西学院大学教授であり様々な場で幅広く活躍されている村尾信尚先生に「岐路に立つ日本」と題して5年ぶりに講演をしていただきます。

《時代はますます不確実性、分断、多極化の様相を強めています。ロシアによるウクライナ侵攻や気候変動など世界は深刻な課題に直面するなか、時代は米国1強から米中2強へと移行しつつあります。共存か対立か?トランプ大統領と習近平主席はどちらを選ぶのか?一方、日本は人口減少や巨額の財政赤字といった制約を乗り越えて、どのような舵取りをすべきでしょうか? 先ずは、経済安全保障の観点から、脆弱な日本経済の現状を解説するとともに、今後避けて通れない気候変動への対応、戦争回避への道を探ります。 

日本経済の再生については、経済成長率は労働人口増加率と労働生産性上昇率の和にほぼ等しいとの公式に沿って、所得の増加をどのように達成するかを考えます。ここでは、特に女性の活躍、外国人労働者の受け入れ、市場と政府の適切な役割分担に焦点を当てたいと思います。 また、日本経済の成長を考えるとき、巨額の財政赤字の存在を忘れてはなりません。本講演時には公表されている令和7年度政府予算案をもとに財政の現状と課題についても触れたいと思います。》

村尾先生より皆さんへのメッセージです。「私はこれからの世界と日本について悲観的な見方をしていますが、それでも私たちの努力次第で事態は好転するとの楽観的な意志は捨てていません。三日月会の皆さんと意見交換できることを楽しみにしております。」

是非多くの皆様のご参加を賜りますよう、ご案内申し上げます。

                   記

日時 :  2025年1月11日(土曜日)今回は第2土曜日開催です。14時30分~15時45分                       【14時開場】

場所 :  関西学院東京丸の内キャンパス ランパスホール 東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

今回は銀座オフィスでなく丸の内キャンパスでの開催でございます。

アクセス :JR東京駅八重洲北口改札口より徒歩2分。 東京メトロ大手町駅B7出入口は改良工事に伴い閉鎖しておりますがサピアタワーに直結しております連絡口は利用できます。

      3階サピアタワーオフィスロビー受付前に「三日月会受付」を設置致します。(13:45~14:30)

会費 :  1000円 〈小ペットボトルの飲み物を用意致します。〉

講師 :  村尾 信尚(むらお のぶたか)先生 :関西学院大学教授

      1955年岐阜県高山市生まれ。78年一橋大学経済学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。外務省在ニューヨーク日本国総領事館副領事、三重県総務部長、大蔵省主計局主計官、財務省理財局国債課長、環境省総合環境政策局総務課長などを経て、2002年退官。

2003年10月より関西学院大学教授。

2006年10月~2018年9月「NEWS ZERO」(日本テレビ系列)メーンキャスターを務める。

2019年10月より特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム顧問。

2023年1月よりふくしまSDG‘s推進プラットフォームアドバイザ―に就任。2024年6月より公益財団法人日本ナショナルトラスト評議員。2024年9月より福島県「しゃくなげ大使」に就任。

近著に『B級キャスター』(小学館)がある。