10月の三日月会例会では同窓の関西学院大学フェロー・客員教授の中井直正先生に、心がときめくような夢のあるご講演をいただきました。タイトルは「電波望遠鏡で知る宇宙の歴史」です。中井先生は世界で初めて銀河中心での、太陽の4000万倍の巨大ブラックホールを発見された方です。ワクワクしてご講演に聞き入ってくださった46名の皆さま、ご参加ありがとうございました。

【ご講演の概要】

1.電波で見る宇宙、電波望遠鏡とは

  先生のご専門は電波天文学です。人間は宇宙をずっと光(可視光)で見てきました。1608年に望遠鏡が発明され1609年にはガリレオが初めて望遠鏡で天体を見て、月のクレーター、木星の衛星、太陽の黒点などを確認しました。この望遠鏡を光学望遠鏡と言います。しかし宇宙からは電波も届いています。その電波をキャッチするのが電波望遠鏡です。1931年~33年にベル研究所のカール・ジャンスキーが、偶然、宇宙からの電波の存在に気がつきました。第2次世界大戦後一気に電波天文学が花開き、日本も野辺山に直径45m の電波望遠鏡を設置しました。可視光は星などの熱い天体から放射されるのに対し、電波はマイナス260度などの冷たいガスから放射されます。暗黒星雲は真っ暗ですが、多くのガスが存在しています。

  電波干渉技術により、光学観測よりも1000倍の解像度が達成され、宇宙が膨張していることや、銀河の中心を詳細に調べることができ、多くの発見が相次ぎました。その後、電波だけではなく赤外線や紫外線などのすべての波長でも宇宙を観測するようになりました。その結果わかったことは、宇宙は人間が考えるより実に豊かであったということです。

  星が終焉を迎える時は大爆発を起こしますが、その時は3ヶ月ほど空には半月くらいの明るさが続きます。平安時代にその現象が起こり『明月記』にも書かれています。関ヶ原の4年後にも同様の現象が起きました。そして星の誕生も電波で調べられるのです。

  アンテナ間の距離が遠いほど解像度は高くなります。何千キロと離れたところに電波望遠鏡を置くと宇宙の電波がどこからきたかを極めて正確に知ることができます。きっかけを作ってくれたジャンスキーは不遇のまま亡くなりましたが、功績を讃えて、宇宙の電波の単位にジャンスキーを使っています。

2.南極に新しい基地を作り、新電波望遠鏡を建設する

・南極内陸部の高原地帯で昭和基地から約千キロメートルのところに新ドームふじ基地を新しく作る。

・ここに口径12メートルの高精度電波望遠鏡を建設し、テラヘルツ波(電波と赤 外線の間の周波数)で宇宙を観測する。

・テラヘルツ波では光速でも130億年以上かかる超遠方を観測し、生命の母体である星・惑星を生み出す銀河とその中心に巨大ブラックホールが誕生した謎を解明する。

・しかし、宇宙から来たテラヘルツ波や赤外線は大気中の水蒸気に吸収されて地上に届かないので観測できない。

・新しく建設する基地は標高が3800mで平均気温がー54°C、最低気温が-80°Cなので大気中の水蒸気が極めて少ない。そのため宇宙からのテラヘルツ波は大気にあまり吸収されずに地球に届き、地上で唯一観測に適しているのは南極である。

・このプロジェクトは関西学院大学と筑波大学が中心となって進めており、約10年後の観測開始を目指している。

この壮大はプロジェクトを楽しそうに熱をこめて語られる中井先生に参加者全員が魅せられ、なんとか実現していただくためのお手伝いをさせていただきたいという気持ちになりました。一緒に夢を見たい方はどうぞ「南極望遠鏡の開発研究」に関する募金にご支援ください。

【以下開催時のご案内の抜粋】

三日会10月度例会は、銀河の中に巨大ブラックホールが存在することを世界で初めて証明するとともに南極内陸部の高原地帯に新しい基地と世界的な電波望遠鏡の建設にも参画するなど天文学の発展に尽力し続けている当学院 理学博士の中井直正氏を講師にお招きし講演をしていただきます。講演の中では直近の30年で新たに解ってきた宇宙の様々な事や、他の恒星で発見された惑星や水、生命体の存在の可能性など宇宙探索の話題も組み入れ、画像や絵、図を使ってわかりやすく紹介していただきます。 また、現在計画中の高精度の電波望遠鏡を建設し、光速で130億年以上かかる遠方宇宙を観測して、宇宙の年齢の矛盾、ブラックホールの形成の謎、行方不明の銀河の探査など私達の多くの世代にとっても子供のころから知りたいと思っていたワクワクする内容が満載です。 是非多くの皆様のご参加を賜りますよう、ご案内申し上げます。

                                記

日時 :  2024年10月5日(土曜日) 14時30分~15時45分 【14時開場】

場所 :  関西学院同窓会本部 銀座オフィス   東京都 中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階

アクセス : 都営浅草線「東銀座」A-8出口徒歩1分銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅A-12徒歩3分

会費 :  1000円 〈小ペットボトルの飲み物を用意致します。〉

講師 :  中井 直正氏 (なかい なおまさ)  1954年 富山県生まれ 

1980年 関西学院大学 理学部物理学科 卒業 

1985年 東京大学 大学院 修了 (理学博士)

1985年 東京大学東京天文台野辺山宇宙電波観測所研究員  1989年国立天文台電波天文学研究系

助手を経て、教授、研究主幹を併任 その後観測所長(併任) (~2004年)

2004年 筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学専攻教授 2018年 退職 (名誉教授)

2018年 関西学院大学 理工学部 教授  2023年 退職

2023年 4月より 関西学院大学フェロー 理学部国内客員教授 現在に至る。

1996年 仁科記念賞 「銀河中心巨大ブラックホールの発見」   2008年 日本学士院賞受賞

2022年 兵庫県科学賞を受賞