9月の三日月会は、外国人留学生が大多数を占める一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(ICS)にて、教鞭を取られている稲葉圭一郎氏をお迎えして、「外国人労働者:人手にも人材にも、人心あり」というタイトルで、今後人口減少が続く日本において、増加すると考えられる外国人労働者の意義と、私たちがなすべきことを多角的に語っていただきました。28名の皆様のご参加、ありがとうございました。

【ご講演の内容】

(1)外国人急増の意義について

私たちは、日本各地で外国人旅行者だけでなく、日本に住み働いている外国人も多く見かけます。では、日本には外国人労働者はどれくらい滞在しているのでしょうか。  外国人労働者数(2023年10月):204.9万人 10年前に比べて133.2万人増加。実に2.8倍になっています。 

・日本の人口(2013年10月):1.27億人 2023年10月:1.24億人 10年で295万人減少しています。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)では、2035年には1.16億になり、800万人減少すると予測しています。

・人口が減少すると、経済の規模が縮小すると言われています。労働者が減って、経済規模が減少すると、我が国の政治力、防衛力、買い付け力に大きな痛手が生じ、潜在的なGDPが伸び悩むことになります。

・日本政府は労働力の減少に、女性の社会進出と高齢者の引退時期の延期などで対応しようとしましたが、女性の労働参加率は70.6%となっており、残る手段として高齢者の引退延期の増強と外国人労働者の招致になるのです。社人研は、人口減少を補うものとして毎年16.4万人の在留外国人の増加が必要と予測しています。

さて外国人労働者の招致の前提は大丈夫でしょうか。

(2)私たちに求められる対応

日本の賃金の伸び悩みと東南アジア諸国での人口の伸び悩みという現実があります。賃金では、韓国の方が高くなっていますので、外国人労働者は、就労先としての日本を選ばないかもしれません。しかし日本に魅力があれば、賃金が他国より低くても日本を就労先として選んでもらえるのではないでしょうか。就労先として日本の魅力には①治安②インフラ③教育が挙げられます。そして外国人旅行者に対するのと同じように、在留外国人にも「おもてなし」の気持ちを持って接することで、差別や人権侵害を無くし、地域社会での孤立を防ぎ、在留外国人の支援制度・体制の整備、異文化理解などの努力によって、外国人労働者が増加するものと考えます。

(まとめ)

経済規模の維持には、外国人「人手」の助けが必要です。経済規模は、政治力、軍事力、買い付け力の源泉だからです。国民1人当たり所得の引き上げには、外国人「人材」の活躍が役に立ちます。外国人の「人手」・「人材」を求める日本の外国人労働者へのアピールにおいては、賃金だけでなく、①外国人労働者に対する国の入国管理制度や企業の人事制度の継続的な手直し②治安・衛生・公教育・公的医療・各種インフラ③差別や孤立の回避に自治体や雇用主の関与④職場・地域社会の仲間として、一人一人の国際性・受容性の発揮など「人心」、つまり日本人の外国人に対する接し方が重要なのです。警察、司法における外国人対応能力の向上も必要です。

【最後に】

私たちの生活は、今や外国人労働者をなくしては、成り立たなくなってきています。コンビニの店員さん、レストランのウェイター、建築現場の作業員など、様々なところで、外国人労働者の方々にお世話になっています。外国人技能実習制度では、外国人労働者が厳しい環境の中で働かされているとの報道がされ、日本人として心を痛める事案が多々起こっていました。外国人技能実習制度は廃止され、育成技能制度という外国人材の確保と育成を目的とする制度に変わりました。私たちは今後、外国人労働者が日本で働いて高い技術や知識を習得して、幸せな生活が出来るように、日常生活のなかで、充分に理解して支援していかなければ思います。