11月の例会は財産の相続の手続きと流れについて知っておくべきことをテーマにして、閑野一樹弁護士にくわしく教えていただきました。間違いのない効率的な準備をさえしておけばずいぶん相続もスムースになります。今やるべきことが見えてきました。30名の皆さまのご参加ありがとうございました。
【ご講演の概要】
閑野弁護士は事務所の場所柄、そこに住み暮らしている人たちの相続や土地の売買、賃貸など家事事件の相談事を扱われることが多いとのことです。そのご経験のなかからトラブルとなった実例をご紹介いただきながら、相続トラブルを避ける方法についてお話しいただきました。
相続の基本知識
1.相続が始まったら遺産の内容に応じ、ゴールを意識する。
土地・建物の場合ー不動産登記の名義変更。
預貯金ー口座解約をして払い戻す。
有価証券ー解約または名義変更
生命保険・死亡退職金ー保険会社等での手続きを経て保険金を受領する。
2.遺言書の有無、法定相続人、遺産の確認
遺言
1.自筆証書遺言
自分で遺言内容を書いて署名押印。費用も時間もかからず書き直しも簡単。
日付はきちんと書く。吉日は不可。遺言の内容は具体的に。法律で定められた方式などに不備があると無効になるため注意が必要。
偽造や紛失の恐れがあるので、法務局に保管申請をするのがよい。
2、公正証書遺言
公証役場で公証人が遺言の内容を聞き取って遺言書を作成する方法。2名の立ち会い証人が必要。
公正証書の作成手数料(財産の評価額に応じて手数料が算出され、大体2〜4万円程度かかるケースが多い)など自筆証書遺言よりも費用がかかってしまうが、公証人によって遺言者の状態や、遺言内容を確認してもらえるため、事後的に無効と判断されるリスクが低い。
3.遺産分割
遺言書がある場合は、その遺言内容を実現していけば良いため、スムースに相続問題が解決する。ただし、遺言書では法定相続分を変更することができるが、法律上、遺留分が保障されているため、仮に遺言書によって、遺留分を侵害されている相続人がいた場合には、遺産を取得した者が遺留分を侵害された者に対し金銭を支払う必要がある。(子の遺留分は法定相続分の2分の1)。
他方、遺言書のない場合は、法定相続人の中で協議をして、誰がどの遺産を取得するのか決定する必要がある。まず戸籍をもとに法定相続人を確定し、遺産の内容やその評価額を確認する。遺産の調査については、不動産は発見しやすいが、預貯金は把握が難しい場合がある。
遺産分割協議が成立するまでは、遺産は相続人全員の共有となるので、例えば、遺産の中に収益物件があり、賃料が発生する場合には相続人がそれぞれ法定相続分の割合で賃料を取得することができる。
最近では、相続分野の法改正があり、配偶者のその後の生活を守るための配偶者居住権という制度などが新設されている。
4.相続人の公平をはかる制度
特別受益(生前贈与)や親の介護をした場合などの特別な貢献(寄与分)がある場合には、相続人間の公平を図る必要が生じる。
実際に経験されていろいろなケースについてもお話しいただきました。事前に遺産の相続先を子供たちに伝えていたにもかかわらず、その後に自筆証書遺言を作成して、すべての財産を一人の子供に相続させる内容に変更していたために、その自筆証書遺言の効力を争うため裁判となったケースなどいろいろ考えさせられる事例をうかがいました。
トラブルのない相続には公証役場での遺言書作成のほかに家族間の日頃のコミュニケーションがなにより大事ということもよくわかりました。そのうちにと先延ばしをするのではなく、早めに手順を考える機会を与えていただきました。ありがとうございました。
【以下開催時のご案内抜粋】
三日月会11月度例会は、田園都市線二子玉川駅近くに事務所を構える弁護士法人フロンティア法律事務所の閑野一樹弁護士をお迎えし、相続の基本的な知識、例えば「相続人は誰がなるのか」、「どのようなものが遺産となるのか」、「揉めるポイント」、「遺言書作成など、紛争予防」に関するお話を分かりやすくご講演いただきます。
事務所の立地環境から様々な相続に関する多くの事例をご経験されていると聞いております。特に、家・土地の相続がある方が、「最初にこれだけは、知っておくべき」ということ、相続の手続きと流れ、ごく普通の家・土地でも、相続するなら、これだけは知らないと損することについて具体的に解説いただけるとのことです。
是非とも多数の皆様のご参加を賜わりますよう、ご案内申し上げます。
記
日 時: 2023年11月4日(土曜日) 14時30分~15時45分 【14時開場】
場 所: 関西学院同窓会本部 銀座オフィス
東京都中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階
アクセス: 都営浅草線「東銀座」A8徒歩1分、銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅A12徒歩3分
会 費: 1,000円 (小ペットボトルの飲み物を用意いたします。)
講 師: 閑野 一樹(かんの かずき)弁護士
所属弁護士会:東京弁護士会
昭和63年11月9日生まれ
平成19年3月 新潟県立高田高等学校卒業
平成23年3月 中央大学法学部国際企業関係法学科卒業
平成25年3月 首都大学東京(現:東京都立大学)法科大学院修了
平成28年1月 弁護士法人フロンティア法律事務所入所
平成28年6月 当事務所二子玉川オフィス所長に就任し、現在に至る
演 題 :「相続、失敗しないために知っておくべきこと」
以上